FC2ブログ

二十三夜待ち 第十七章

二十三夜待ち 第十七章 

FC2 Blog Ranking

素封家の睦沢家に嫁ぎながら、夫の和馬ではなく、かつての生徒だった画家の下布施清一を愛した千代。

千代は社会が用意してくれた幸福を捨て、清一の心の中に生き続ける道を選んだのだろう。


だが小鶴は、道具としての暮らしに不満を抱えながらも、夫や家族を捨てる勇気が持てずに躊躇っている。

寛三に愛されたい。


一度だけでも抱かれたい。

その想いは真実だが、社会から逸脱してしまう恐怖が小鶴を踏み止まらせていた。


その時、小鶴は千代の声を聞いた。


(小鶴、幸せは自分でつかむものよ)

おそらく子供がいなければ、千代は清一と駆け落ちしていたのかもしれない。

あの激しい情事を目撃した小鶴は、それも至極当たり前のことと今になれば思えた。

たとえ赤貧洗うが如き暮らしに身を落とそうが、男に愛されて生きる幸せは、女にとって無上の西方浄土なのではないだろうか。


愛される幸せ。


愛する幸せ。


男と女の歓びを知らずして、与えられた命を虚しく終えるなら、何のために生まれてきたのかわからないではないか。


小鶴は寛三の手を振り解くと、自分から絣の着物を脱ぎ捨てて全裸になった。


「こ、小鶴さん」


思わぬ小鶴の大胆さに、寛三は後退りしながら血走った目を大きく見開いた。

 

続く…

皆様から頂くが小説を書く原動力です

FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る




関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十六章

二十三夜待ち 第十六章 

FC2 Blog Ranking

二人はみすぼらしい六畳一間の部屋で、卓袱台を挟んでしばらく俯き合っていた。
小綺麗に掃除は行き届いていたが、家財道具は布団一組しかない殺風景な部屋だった。

「な、何か食べる物をつくるわ」

立ち上がって部屋の外にある共同炊事場へ行こうとすると、小鶴は乱暴に背後から抱きすくめられた。

「ず、ずっと好きでした」

「・・・・」

力任せに抱かれながら、小鶴はありきたりな言い訳を何度も頭の中で繰り返した。

私には夫がいるから。

ずっと年上のオバサンだから。

私、男の人に想われるような美しい女じゃないから。

(違う・・そんなの嘘だわ!)

ぶるっと小鶴は身震いした。

体の何処からか突き上げてくる抑え切れない情動に、あざとい詭弁と紙一重の冷徹な理性の鎧が剥げ落ちていく。

容姿と貧しさに対する劣等感。

子供の頃から弱い自分を守るために、ありとあらぬる言い訳を考えてきた。
それが大人達には利発と映ったのだろうが、そうでもしなければ、小鶴自身が己の無価値さに押し潰されてしまいそうだった。

確かに道具として小鶴は優秀なのだろう。
子守りにしても、農家の嫁としても、社会が求める労働力としては重宝されてきた。

だが小鶴は愛されたことがない。
酒浸りの父と愛しみを失った母は、小鶴を避妊しそこねた結果の厄介者として売り払った。

その小鶴を買い取った夫と舅姑は、牛馬よりも安価な道具として手荒く扱き使った。
涙が頬を伝った。

小鶴の負い目や劣等感を知りながら、もっと華やかな結婚ができるかもしれないのに、寛三はみすぼらしい行商に身をやつした女を愛すると告げたのだ。

「・・若奥様」

小鶴は口の中で小さく呟いた。

続く…

皆様から頂くが小説を書く原動力です

FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 18禁・官能小説
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十五章

二十三夜待ち 第十五章 

FC2 Blog Ranking

その翌々年、昭和三十一年。

世の中は「もはや戦後ではない」という言葉とともに、三種の神器になぞらえた家電製品の登場で、神武景気と呼ばれた高度経済成長が幕を開けようとしていた。

同時に、当時流行した春日八郎の『別れの一本杉』の歌詞の如く、大都市東京への人口集中が始まろうとしていた。

小鶴の行商も右肩上がりに売れ行きを伸ばし、谷上家の家計をずいぶんと助けるまでになっていた。

言い換えれば、小鶴は行商によって、まだ閉鎖的な農家にあって発言権を築き始めたのだった。

そんなある日、軒先を借りていた蕎麦屋の主人が困った顔で小鶴にぼやいた。

「忙しくて猫の手も借りたい時に、あの野郎が風邪をひくなんてなあ」

「鎌田さんは今日お休みなんですか?」

「ええ、あの野郎、近くのアパートで一人暮らしなんですよ。放っておいたら風邪をこじらせて死ぬかもしれねえなあ・・」

「まあ、大変じゃないですか!」

小鶴は急いで店を畳むと、主人からアパートの場所を聞いて向かった。

そこは店から百メートルも離れていない木造のあばら屋だった。

「鎌田さん、鎌田さん」

鎌田と手書きで書かれた張り紙が剥がれかけた二階隅の扉を叩くと、継ぎ接ぎの丹前を着た寛三が現れた。

扉を開けて小鶴を見た寛三は吃驚して飛び上がった。

「谷上さん・・どうして?」

「だって、店のご主人が・・鎌田さん、風邪をこじらせて死にそうだって・・」

「いえ、昨夜からちょっと風邪気味だったんですけど、朝、店へ行ったら、親方が風邪でも盲腸でもいいからつべこべ言わず今日は休めって・・あっ」

「・・そ、そうだったの」

それは寛三の想いに薄々気づいていた蕎麦屋の主人の粋な計らいだった。

続く…

皆様から頂くが小説を書く原動力です

FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十四章

二十三夜待ち 第十四章 

FC2 Blog Ranking

そんな時、小鶴は一人の男に出逢った。

軒先を借りた蕎麦屋の若い店員、鎌田寛三である。

中学を卒業して花巻から出て来た十九歳の青年で、東北人らしく寡黙だが働き物で、雨の日の出前も愚痴一つ言わなかった。

「一息入れて下さい」

暑い夏の日には香ばしい麦茶を、寒い冬の日には暖かい蕎麦湯を、店先で茣蓙に座る小鶴へそっと持ってきてくれた。

取り立てて何を話すわけでもないが、小鶴は寛三のさり気ない心遣いが嬉しかった。

不器用で蕎麦屋の店主からはよく叱られていたが、そんな寛三が弟のように愛らしく、小鶴も売れ残った野菜を新聞紙に包んで寛三に渡してあげたりした。

「いつか親方に認められ、暖簾分けして貰って自分の店を持ちたいんです」

それが軒先で行商する小鶴に語った寛三の夢だった。

「あら、ステキだわ・・私も鎌田さんみたいに夢が持てたらいいなあ」

小鶴は寛三が羨ましかった。

若い寛三には無限の可能性があり未来がある。

それに引き換え小鶴は、好きでもない夫と死ぬまで農業を続けて暮らす宿命しかない。

「でも谷上さん、夢を叶えるには実力と責任、そして勇気が必要だと親方が教えてくれました。私にはまだそれがありません」

「・・もっともっと修業を積めば自然と自信がつくはずよ。大丈夫、鎌田さんはきっと暖簾分けしてもらえるわ」

「あ、有難うございます」

朴訥に頭を下げて店に戻る寛三の背中を見ながら、小鶴は宿命に縛りつけられた自分に自虐的な笑みを浮かべた。

続く…

皆様から頂くが小説を書く原動力です

FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十三章

二十三夜待ち 第十三章 

FC2 Blog Ranking

昭和二十九年。
二十五歳になった小鶴は、天から射し込む光明を見た。


それは行商だった。

収穫した野菜を背負えるだけ背負って都会へ売りに行く。
行商は近郊農家にとって貴重な現金収入であり、女達の仕事だった。

人通りの多い街中で茣蓙を敷き、物乞いにも似た姿で農作物を商うことは、自尊心が高過ぎる男達にはできない仕事なのかもしれない。


朝の五時に起きて始発の房総東線に乗る。
背中に五十キロ、両手で二十キロほどの野菜を担いで都会へ向かう。

午前中に商いを済ませて家に戻り、翌日の農作物を収穫して荷造りを済ませ、夕飯の支度や家事を終えて就寝する厳しい生活だった。


小鶴も夫に命じられて行商へ行かされた。
初めて行商に出た小鶴は、村の女達とかち合わないよう川崎の工場労働者が住む地域へ向かった。

そこは路地裏にあばら家がひしめくスラムだった。
蕎麦屋の軒下を借りて野菜を並べてはみたが、行き交う人々に向かって売り声も出せず、しばらくはただ俯いて座っているばかりだった。


下町の女達は人情に厚い。
恥ずかしそうにもじもじする小鶴に、割烹着姿のおかみさん連中が気遣って声をかけてくれた。


「あんた商売は始めてかい?」


「おや、いい茄子じゃないか。ひと山貰おうかね」


「ちょっと、山田の奥さん、この娘初めての行商で難儀しているのさ。可哀想だから近所の人を呼んできて、荷物を捌いてあげようじゃないの」


その日はあっと言う間に野菜は売れてしまった。翌日からは一人二人と馴染客が増え、世間話に花を咲かすほど自然と街に溶け込んでいった。


小鶴は行商が楽しくなった。
商いする喜びや都会の華やかさは勿論、多くの人々と触れ合う喜びは、狭い田舎では決して得られない経験だった。

そして何より、夫や舅姑から解放される時間を持てることが一番の幸せだった。

 

続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る




関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十二章

二十三夜待ち 第十二章 

FC2 Blog Ranking


だが現実は小鶴の夢を打ち砕いた。


戦争が終わった翌々年、小鶴は十八歳で九十九里浜に近い一宮町の農家に嫁いだ。


睦沢家が決めた結婚だった。

相手は睦沢家に仕えていた小作の親類で、農地解放で小さいながらも田圃を持つ農家の長男だった。


谷上正一は三十歳。


小鶴とは一回りも年が離れていた。

睦沢和馬は何も言わなかったが、おそらく不器量な小鶴の貰い手は、近隣でなかなか見つからなかったのだろう。


しかも正一は粗暴で野卑だった。


稲作の仕事は真面目にするが、教養どころか農業以外のことは何一つ知らなかった。

酒が好きで、飲むと事あるごとに小鶴に暴力をふるった。


「お前のように不細工で小利口でくそ生意気な女は嫌いじゃ。睦沢家に頼まれなければ、俺は絶対にお前など女房にはしなかった」


夫婦の性もほとんど強かんに近かった。

愛撫も何もなく挿入されるだけで、小鶴は正一の性処理道具以外の何物でもなかった。


また舅や姑も小鶴をいびり倒した。


「睦沢家に石女を押しつけられて谷上家も終わりじゃ」


正一と小鶴の間には、結婚して数年経っても子供ができなかった。

貧しい暮らしの鬱憤を晴らすかのように、家族全員がその鉾先を小鶴に向けたのだった。


小鶴は毎晩泣き明かした。


(これがあたしの人生なの・・)


いくら酷い仕打ちを受けても、実家から厄介払いされた小鶴には、帰る家もなく頼れる肉親もいなかった。


早朝から牛馬の如く田畑でこき使われ、家に戻っても深夜まで家事をこなした。

働けど働けど正一や舅姑に認められることもなく、ただ小鶴は地獄へ続く暗い闇の穴へ落ちて行くのだった。

 

続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 妄想の座敷牢
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十一章

二十三夜待ち 第十一章 

FC2 Blog Ranking

千代の葬儀があった夜、小鶴は未来に現れるかもしれない男を夢見て、布団の中で無意識に自分の乳房と陰部へ指を這わせていた。

乳首は痛いほどチクチクと尖り、すでに陰部は深い沼地のように熱くどろどろとした粘液が溢れていた。

「あ、ああ・・いけないよぉ・・」

左手で硬く粟立った乳首を摘まみ、右手で敏感になった花蕾と秘唇を交互に辿ると、その悦びの電
流に感電して小鶴は思わず喘ぎ声をあげた。

小鶴は息を荒げながら、何度も幼い頃に聞いた千代の言葉を頭の中で繰り返した。

「小鶴は賢い娘だからきっと大切にしてくれる殿方が現れるわ」

貧しく器量が悪い娘への慰めだと思っていたのに、表向きの幸福を捨てて、千代は清一との許されぬ愛を貫いて見せたのだった。

命を擲っても惜しくない愛。

そんな絵空事を、千代は命を張って真実であると小鶴に教えてくれたのかもしれない。

「ああっ、若奥様・・小鶴は・・小鶴は・・本当に人生を託せる男と巡り合えるんでしょうか・・ああ・・」

身も心も捧げた男を受け入れる己の痴態を夢想すると、自然と陰部を弄る指の動きが強く荒々しくなる。

そして口を半開きにして喘ぎながら、小鶴は全身をヒクヒク痙攣させて女の悦びに征服された。

つっと涙が頬を伝った。

(・・好いた男に巡り会えた若奥様は、この世で一番幸せだったのよ)

小鶴は陰部をそっとちり紙で拭くと、掛け布団を頭まで被って咽び泣いた。
 

続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る





関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第十章

二十三夜待ち 第十章 

FC2 Blog Ranking

ところがその春のこと、唐突に清一は英霊として月海集落へ戻ってきた。


南方へ向かう輸送船に乗っていた清一は、潜水艦の魚雷攻撃を受けて戦死したと聞かされた。

むろん下布施家が受け取ったのは空の遺骨箱だった。

その夕刻、月出山は気味が悪いほど赤々とした夕暮れに縁取られ、山の烏が五月蝿いほど狂ったように鳴いた。

翌日、月讀神社は再び騒然とした雰囲気に包まれた。


社殿の中で首を吊った女の遺骸が見つかったのだ。


千代だった。


家人や親族は世間体を気にして、公に葬儀もせず密かに千代の存在すら葬り去った。

遺書などは何もなかったが、清一の戦死と社殿の天女像から、集落の人々は千代の気持ちを察して口を噤んだ。

また娘を残された夫の和馬は、事情を呑みこめないまま、否、事情をこれ以上明らかにしたくないのか、しばらく東京に住む親族の家に身を寄せるため月海集落を離れた。

 
いくら戦時中とは言え、周囲から見れば遣る瀬ない男と女の末路だったに違いない。


だが小鶴は千代に嫉妬を覚えた。


きっと千代は幸せだったのだ。


己の命を賭してまで、恋愛を成就させる情熱が千代と清一にはあったではないか。

二十三夜の夜に見た激しく貪り合う情交は、一生を一瞬に昇華してしまうほどの灼熱の炎に包まれていた。


小鶴は己の境遇を改めて振り返った。


(私も出逢えるのだろうか? そして出逢えた時、命すら捨ててその人の懐に飛び込んでいけるのだろうか?)


親が選んだ相手、しかもその顔や性格すら見合い当日までわからない。

そんな男と形だけ結婚して、死ぬまで添い遂げる人生が果たして幸せなのだろうか。

 

続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る




関連記事

theme : 18禁・官能小説
genre : アダルト

二十三夜待ち 第九章

二十三夜待ち 第九章 

FC2 Blog Ranking

清一は月海集落にある造り酒屋の長男で、尋常小学校に通っていた頃から絵が上手だと近隣では有名だった。

小鶴自身も学校の廊下に貼り出された清一の絵を何度か見たことがある。

月出山を写生した絵などは、まるで写真ではないかと見紛うほど、山を覆う木々が一本一本細密に描かれていた。

家業を手伝いながら画家を目指していた清一は、今年の一月、二十一歳で召集されて南方の戦線へ向かって行った。


(あの夜、若奥様と逢っていたのは清一さんだったのかもしれない)


そう考えると、月光に映し出された若い男の背恰好は、酒屋の店先で見かける清一に似ていたような気もする。

改めて小鶴は愕然とした。


千代が女教師としては月海集落へ赴任した頃、清一はまだ尋常小学校の上級生で在学していた。

千代と清一の関係がいつ始まったかはわからないが、教師と教え子の間柄でありながら二人は情を通わせ合う仲だったのだ。

そして戦地へ出征する前に、清一は自分の手で愛する千代の姿を残しておきたかったのだろう。

それをわざわざ村人の目に触れる月讀神社に残したのは、戦地で死ぬやもしれぬ運命を前に、千代への想いを永遠に刻みつけたい執念に駆られたからかもしれない。


(でも若奥様の立場は・・)


天井画を見た女達は、睦沢家の千代様に似ていると誰ともなく噂した。

だが睦沢家は沈黙した。

何事もなかったかのように、千代も普段通りの生活を続けた。

確かに天女の顔は瓜二つだが、その裸身を実際に見た者は集落におらず、千代に懸想した清一の悪戯だとする男達もいた。


続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 本格官能小説 
genre : アダルト

二十三夜待ち 第八章

二十三夜待ち 第八章 

FC2 Blog Ranking


昭和二十年初頭の冬。

田の畔や路傍の名もない草が枯れ、房総の里山は一面乾いた朽葉色に染められていた。

ここ月海集落でも英霊達の遺骨が戻る日が増え、我が物顔に上空を通り過ぎる敵軍機を目の当たりにして、いよいよ本土決戦も間近いと人々は頻りに噂した。

そんな折、集落におかしな騒ぎが起きた。

たまたま掃除に来た婦人会が、月讀神社の天井に天女の絵を見つけたのだった。

「・・・・」

女達は息を呑んだ。

今年の正月に詣でた時には天井画などはなかった。

それが突然社殿の天井に天女が出現したのだ。

女達の中には戦争に勝つ予兆だと噂する者もいた。

だがそれよりも女達を驚かせたのは、天井に描かれた天女像が露な裸身を晒していたことだった。

しかもよくある平安朝的な天女ではなく、その描写は顔形や体形まで写実的で西洋絵画のように美しかった。

小鶴は人だかりを掻き分けて社殿に入って天井を見上げた。

「あっ!」

思わず小鶴は声を上げてしまった。

(・・これは若奥様だ)

その天女は 顔立ちだけではなく、描き込まれた乳房の形まで千代に酷似していた。

見物に集まった人々もそれに気づいてか、好奇の眼差しで、口に手を当ててひそひそと小声で話し合っている。

小鶴の頭は猛烈に回転した。

千代の顔立ちはともかく、その裸身を知る者と言えば、当然夫の睦沢和馬しかいないはずだ。

だが凡庸な和馬に絵心などあるとはとても思えなかった。

その時、小鶴の脳裏を再びあの夜の情景が過った。

(あっ、あの二十三夜の夜に・・若奥様は確か清一君って・・)

和馬の他に千代の裸身を知る人物、それはあの夜に目撃した情事の相手ぐらいしかいないはずだ。

小鶴は天井画の右下に書かれた銘を見た。

清一。

黒字で殴り書きされたその名に、小鶴は尋常小学校の上級生だった下布施清一を思い出した。

続く…


皆様から頂くが小説を書く原動力です
FC2官能小説集結 にほんブログ村 恋愛・愛欲小説 人気ブログ「官能小説」ランキング 

「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に戻る



関連記事

theme : 18禁・官能小説
genre : アダルト

プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
最近の記事
FC2カウンター
最近のコメント
データ取得中...
ブログ内検索
アクセスランキング
ご訪問ありがとうございます。
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ フィードメーター - 『妄想の座敷牢』~官能小説家、紅殻格子の世界~
ランダムでブログを紹介
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

携帯からご覧いただけます
QR
FC2ブックマーク
RSSリンクの表示
FC2ブログランキング
 あと一歩のを目指して…
 日々頑張って書いています

応援よろしくお願いします
FC2官能小説ランキング入り口 
FC2官能小説ランキング入り口
にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。お陰さまで「恋愛(愛欲)小説ランキング」上位に入りました。

↓妄想の座敷牢は何位??↓
   にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)ランキングに行ってみる
     にほんブログ村
  にほんブログ村(愛欲小説)
     にほんブログ村 小説ブログはこちらから…

 [官能小説] ブログ村キーワード
人気ブログランキング


        
人気ブログランキングへ
カテゴリ別小説選びにお勧め
様々なジャンルの小説検索が可能です。 

  カテゴリ別オンライン小説
  カテゴリ別小説ランキング 
 
     HONなび 
 オンライン小説ナビゲーター「HONなび」

    ネット小説ランキング投票
ネット小説ランキング/成人向け小説専用
ジャンル別リンクサイト様
相互リンクサイト様
※「妄想の座敷牢」はリンクフリーです。 また相互リンクを希望される方は、メールフォームorコメント欄で連絡をいただければ検討させて頂きます。 ※ただし商用目的だけのサイト及び有料アダルトサイトに誘導する目的のサイトは、こちらにお越しくださる皆様のご迷惑となりますのでお断りさせて頂きます。
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク用バーナー
妄想の座敷牢8

妄想の座敷牢7

妄想の座敷牢9

妄想の座敷牢4

妄想の座敷牢6

妄想の座敷牢5