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童話『プリン』後記

   童話『プリン』後記  

人気競走馬育成ゲーム『ダビスタ』に、マチカネイワシミズという交配料0円の種馬がいました。
普通、所有する牝馬に実績のある牡馬を種付けするには、数百万もの費用がかかります。

ところがマチカネイワシミズは種牡馬で最下位ランクですが、牝馬オオシマナギサに種付けすると、もの凄い快足馬が生まれたりするのです。
これは『ダビスタ』ファンでは有名な裏技です。

マチカネイワシミズは実在する馬で、活躍する前に故障してしまいましたが、その全兄(父母が同じ)がハードバージという皐月賞馬です。
作品に書いたプリンは、ハードバージをモデルにしています。

実在の名馬ハードバージは、お読み戴いたプリンと同じ生涯を辿りました。
ハードバージが活躍した世代は「悲運の世代」と呼ばれ、ダービーを制したラッキールーラも、種牡馬として不当な評価を受けて韓国へ供出されました。

ハードバージは、ショーや馬車の牽引役として使役されて熱射病で死にました。
皐月賞馬が熱射病で斃死・・名馬ハードバージの末路をスポーツ新聞が記事にしました。
世論は彼の死を憐れみました。
これにより中央競馬会が、功績馬の養老施設などの対策を講じる契機となりました。

私は中山競馬場で、歴代皐月賞馬のリストにハードバージの名を見つけました。
目頭が熱くなりました。
もちろん競馬界では有名な話ですが、改めてハードバージの存在を子供達にも知って欲しいと考えるようになりました。

それがプリンです。
しかし私はハードバージの生涯が、本当に悲劇だったとは思いたくありませんでした。
人間に喩えても、悲劇の人生などとレッテルを貼ることが、本人の生涯を正しく伝えているとは思えないのです。

貧しかった石川啄木は本当に不運な歌人なのでしょうか? 
果たして宮沢賢治は?

ハードバージが哀しい生涯を閉じたと考えるのは、あくまで世間の評価であって、競馬界の常識から見た競走馬の悲劇ではないのでしょうか。
彼はショーの馬として、重い西洋鎧を着た騎士を乗せることを本当に屈辱と思っていたのでしょうか。
それは誰にもわかりません。

私はハードバージが幸せだったと信じたいのかもしれません。
これもまた真実かどうかはわかりません。
しかし人間は死ぬ前に自分の人生をどう振り返るのか、私は決して否定的なことはあり得ないと思います。
人は死ぬ時、幸せだったと確信したいからです。
紅殻格子
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童話「プリン」・・・最終章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。

日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

最終章

古谷牧場。
キタコブシの白い花の下で、洋士は社会科見学の小学生たちに囲まれている。

「大学を卒業した私は、牧場に戻って父の仕事を手伝うようになりました」

洋士はキタコブシの根元を指差した。

「ここにもらったプリンのたてがみを埋め、北海道に春を告げるこの木を植えました。
毎年キタコブシの白い花が咲くたびに、私は今もプリンのことを思い出します。
目を細めて鼻をすりよせてくるプリンに、ありがとうと心の中で声をかけてやるのです・・
はい、これでプリンの話はおしまい」

話し終えた洋士が見ると、小学生たちはみんなうつむいてしゃくりあげていた。
引率の先生もハンカチを目に当てている。

「プリンが可哀想」

「もっと長生きさせてあげたかった」

口々に小学生たちは、プリンの死を悲しんでくれた。
洋士は笑って問いかけた。

「うん、早く死んでしまったことは可哀想かもしれない。働かされなかったら、もう少し長生きできたかもしれないね。でもプリンは新聞で書かれたように、可哀想な馬だったのかな?」

子供は答える。

「ううん、プリンは好きだった子供と一緒で楽しかったんだよ」

「優しい畠山さんにかわいがられて幸せだったんだわ」

洋士は目を細めて小さく笑った。

「そうだね。プリンは言葉が喋れないけど、オジサンは日本一幸せな馬だと今も思っているんだよ」

すると子供たちにオバサンと言われた女性が、突然後ろから目をうるませて声を張りあげた。

「そうよ、幸せかどうかは自分が感じるもので、他の人に決めつけられるものじゃないのよ。私も千葉へ行ってそれがわかったわ」

子供たちの視線が一斉に清美へ向いた。

「このオバサンが清美さん・・?」

子供たちの顔に、何とも言われぬ複雑な表情が浮かんだ。
洋士は笑った。

「ほら、あそこにいる栗色の子馬を見てごらん。あれはプリンの娘が産んだ子馬だよ。プリンにとっては孫にあたるんだ。さあ、みんなで見に行ってごらん」

子供たちが牧草の丘を駆けて行く。
洋士は青空に枝を広げるキタコブシを見上げた。

「プリン」

風が吹いた。
キタコブシの花が揺れて、青空の中をプリンが走っているように見えた。
― おわり ―
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童話『プリン』・・・第三十章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、
椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。

日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

第三十章

洋士はプリンの写真を見た。
プリンが畠山に顔をすりよせ、仲良く並んで写っている。

「畠山さん、プリンを大切に面倒みて下さったんですね」

「・・申し訳ないことです。あなたが大切に育てたタロウを殺してしまって・・」

皺だらけの顔をくしゃくしゃにして、畠山は涙をこぼして頭を下げた。

「いえ、プリンは幸せだったと思います。この写真と馬房を見ればわかります。きっと子供たちと遊べて、プリンは毎日が楽しかったはずです。ありがとうございました」

洋士も、プリンをかわいがってくれた畠山に頭を下げた。
皐月賞馬の哀れな死――競馬ファンからすれば、それは新聞に書かれた通りだろう。

だがプリンは、たくさんの子供たちに囲まれて幸せだったに違いない。
大人を乗せる乗馬は嫌でも、子供が集まる観光牧場では、牧場で洋士と一緒にいた日々を思い出していたに違いない。

東京へ戻る列車に、洋士と清美は乗っていた。
二人はずっと黙ったまま、夕陽に染まる海を車窓から眺めていた。
洋士は、畠山からもらったプリンのたてがみをにぎりしめた。

「・・大学を卒業したら、日へ帰ろうと思うんだ」

「牧場を継ぐの?」

「うん、引退したプリンの子を探して、かわいい孫を育ててみたくなった」

「いいわね、私も協力してあげる」

洋士と清美は遠く空へ目をやった。
茜色に輝く湧きあがった雲が、栗毛だったプリンの横顔のように見えた。
つづく・・・
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童話「プリン」・・・第二十九章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二十九章

プリンの生産者だと告げると、経営者はプリンが暮らした馬房で、世話をしていた老人に会わせてくれた。

「畠山です」

白髪頭の老人は、申し訳なさそうに頭を下げた。
古びた馬房には、ここで撮られたプリンの写真と花が活けてあった。
老人はプリンをタロウと呼んだ。タロウは孫の名前だという。

「そんなに偉い馬だとは知らなかったんですよ。タロウは力があって、よく働いてくれる馬だったんです」

清美が泣きながら畠山に食ってかかった。

「どうしてそんなひどいショーに出させたんですか? 日射病になるまでプリンを働かせるなんて・・」

「すみません・・でもタロウは、集まってくる子供が大好きで、ショーに出るのを嫌がらなかったんです」

「そんなことわかるんですか?」

「ええ、子供が近くにいると、目を細めて鼻をこすりつけるような仕草をして・・」

洋士は、プリンの写真の前で膝から崩れ落ちた。

「ごめん、プリン・・」

たぶん畠山の言うことは本当だろう。
ここへ来てからも、プリンは洋士のことを思っていてくれていた。
子供の頃の洋士を、プリンはずっと探していてくれたのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十八章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。

第二十八章

むろん一年に一万頭近く生まれるサラブレッドは、乗馬になることもかなわず死んでいく。
だが皐月賞馬として愛された馬の最後としては、あまりにも切なく哀しい流転の生涯である』

もう涙で洋士は記事が読めなかった。清美も泣いている。
洋士はうめくように名を呼んだ。

「プリン・・」

悔しくて言葉にならなかった。
幸せな生活をしていると、洋士は勝手に想像してプリンを見捨てたのだ。
もしプリンの苦しみがわかっていたら、哲夫に頼み込めば、古谷牧場へ引き取ることもできたはずだ。

今もプリンの顔が目に浮かぶ。
もっと一緒に遊んでやりたかった。
もっと甘えさせてやりたかった。
もっとニンジンの細切りを食べさせてやりたかった。
しばらく子供のように泣いていた洋士に、プリンが死んだ観光牧場へ行きたいと清美は言った。

「・・しかし」

泣いていた清美は、有無を言わせず洋士に支度させると、手を引いてアパートから引っ張り出した。
そして東京駅で列車に乗ると、二人は一路晩夏の房総半島へ向かった。

きらきらと波頭が輝く海の近くに、その観光牧場はあった。
砂のコースがあるだけの、どこかさびれた田舎の観光施設だった。

洋士はがく然とした。
東京から列車で一時間半ぐらいの距離にプリンはいたのだ。

そして過酷な重労働を強いられていた。
そんなプリンを放ったらかしにして、洋士は東京で楽しい生活をぬくぬくと送っていた。
そう思うと、プリンが死んだ観光牧場へ入るのが、洋士は恐くてしかたなかった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十七章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二十七章

ある朝、清美から電話がかかってきた。
高校を卒業した清美は、やはり東京のデパートに就職していた。
お互いに忙しくてめったに連絡は取れないが、年に一度は日から出てきた仲間で親睦会がある。
だが清美の声は慌てていた。

「古谷君、大変よ、大変なのよ!」

「どうしたの?」

「き、昨日の朝売新聞の夕刊読んだ?」

「いや、朝売はとっていないから・・」

「とにかく、今から古谷君のアパートへ行くから待っていて」

清美は一方的に電話を切った。
平日だが清美は仕事が休みなのだろう。
洋士も今日は大学での講義はなかった。

アパートに清美が駆け込んできた。
そしてバッグから新聞を取り出すと、洋士の前に広げた。

『皐月賞馬プリンスバード、哀れな死』

新聞の見出しは、確かにプリンの死を伝えていた。
洋士は急いで記事を読み始めた。

『およそ十年前、皐月賞優勝、日本ダービー二位の栄誉に輝いたプリンスバードが、先月千葉県南房総にある観光牧場で、ひっそりと亡くなっているのが確認された。

プリンスバードは引退後、種牡馬となったものの活躍する子が現れず、乗馬センターへ引き取られた。
しかしそこでも、人を乗せると暴れたりしたため、三ヵ月後にはその観光牧場へ売り渡された。

牧場では、園内イベントや馬のショーで働いていた。
今年の夏、中世ヨーロッパの騎馬戦ショーが催された。

プリンスバードは、鎧をつけた九十キロ以上の人を乗せ、三週間にわたって炎天下のショーを強いられた。
長期にわたる過酷な使役で、プリンスバードは日射病にかかり、飼い葉もほとんど食べられず衰弱死した。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十六章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二十六章

それから十年近くが経った。
大学へ進学した洋士は、北海道を離れて東京のアパートで一人暮らしをしていた。
大学生活も今年で四年目を迎え、洋士はこのまま東京の会社に就職するつもりでいた。

東京の暮らしは楽しかった。
映画館や劇場、巨大なショッピングセンターに遊園地――牧場ばかりの日高にはない世界が東京にはあった。

目まぐるしい暮らしに、洋士はプリンのことを忘れかけていた。
いや、忘れていたわけではないが、プリンは皐月賞馬の名誉を手にして、幸せな種牡馬生活を送っていると思っていた。

競馬は血統のスポーツと言われる。
サラブレッドは、その祖先を遡ると三頭の馬に辿り着く。
三頭の馬から、人間は約三百年かけて、より速く走る馬をつくりだしてきた。

優秀な馬を見分けるのがレースだった。
人々はレースを勝った牡馬や牝馬の子馬を競って手に入れた。
子馬をまたレースで走らせ、勝てばさらにその子をつくらせる。
こうして改良されたのが、競馬を走っているサラブレッドなのだ。

だから大レースに勝ったプリンは、引退して種牡馬と呼ばれる父馬になった。
馬の寿命は二十歳から二十五歳だ。
プリンは今十三歳ぐらいだから、まだ種牡馬として活躍しているに違いない。

そしてプリンの子供や孫がレースに出て、その強い血を今も競馬界に伝えていることだろう。
馬の世界から離れた洋士は、そんな風にばくぜんと思っていた。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十五章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、競走馬の名誉でも栄光でもなかった・・・。
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第二十五章

スタンド前へ戻ってきたプリンに、たくさんの観客が大きな声援を送った。
騎手は誇らしげに手を上げたが、プリンはキョロキョロして落ち着かなく見えた。

レース後、口取り式があった。
皐月賞と刺繍された優勝レイをかけたプリンを中心に、長い引き綱を関係者が持って並んだ。

馬主の金子、調教師の森本、哲夫と明子、そして洋士も、報道陣のカメラの前で綱を取った。
口取り式が終わると、洋士はプリンの前に出て肩のあたりをなでた。

「・・・・」

プリンを褒めてやろうとしたが、洋士は胸が詰まって言葉がでなかった。
プリンは安心したように目を細め、洋士の顔へ鼻先をくっつけてきた。

子馬の頃と変わらない甘えん坊のプリンだった。
表彰式に引かれていくプリンが、ゆらゆらと涙で滲んで見えた。

その後プリンは、三歳馬最高峰のレース、日本ダービーに挑戦した。
一番人気だった。
だがゴール前でラッキーポーラに抜かれて二着に終わった。

しかも残念なことに、レース中に足を怪我していた。
重傷ではなかったが、治療に一年ぐらいかかるため、プリンは引退することになった。

全成績十一戦三勝。
プリンの名前は、皐月賞馬として、競馬の歴史にしっかりと刻まれたのだった。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十四章

            『プリン』
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
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第二十四章

人気を集めるラッキーポーラやハローバンガードは、好位置と言われる先頭から三、四番手を進んでいる。
あまり後方にいると、ゴール前での最後の勝負に間に合わなくなる。

やがて馬群は向こう正面から、スタンドの方へコースを回ってくる。
哲夫が叫んだ。

「ああ、あんなに後ろにいたら、先頭に届かないぞ!」

洋士の目にも、まだプリンが後方でもたもたしているのがわかった。
どこか落ち着きがなく、キョロキョロと周りの馬に遠慮しているようだった。

馬群は最後のコーナーを曲がり、ゴール前の直線での脚比べになった。
プリンはまだ後方、騎手は洋士が見守るコースの大外へプリンを導いた。

「ああ、これは負けだ」

哲夫が悔しそうに頭を抱えた。
だが洋士は立ち上がって柵にしがみつくと、目の前を走りぬけるプリンに叫んだ。

「プリン!」

プリンは首を曲げて洋士をちらっと見た。
すると全身の筋肉をぎゅっと躍動させ、最後方から矢のようにグンと加速した。

ゴールへ向かって、大外からプリンが風のように駆け抜けて行った。
ワーッという歓声があがり、外れた馬券と競馬新聞が雪のように舞った。

「か、勝ったぞ、プリンが勝った」

哲夫が洋士を抱きしめた。

「プ、プリンが勝ったの?」

「ゴール前で他の馬をごぼう抜きした」

洋士は一瞬幼い頃のプリンを思いだした。
あの甘えん坊だったプリンが、クラシックレースの一冠、皐月賞を勝ったのだ。
つづく・・・
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童話『プリン』・・・第二十三章

            『プリン』
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第二十三章

プリンは八番人気だった。
実力からすれば仕方ないが、洋士はちょっぴり悔しい気持ちがした。

哲夫と洋士は、プリンが準備する競馬場の馬房へ向かった。
特別に森本調教師がプリンに会わせてくれた。そこには、ツヤツヤした栗色の馬体を輝かせたプリンでいた。

「プリン!」

洋士の姿を見つけたプリンは、ブルルッと鼻を鳴らした。
そして甘えたくて、頭を突き出してなでてもらおうとする。

いつものプリンだった。
レース前でニンジンをやることができないが、洋士はすりつけてくるプリンの顔を優しくなでてやった。

「勝てなくてもいいから、怪我をしないで帰ってくるんだぞ」

人気がなくて悔しい気持ちはもう消えていた。
やはりプリンは洋士の弟だった。
プリンはいつものプリンでいいと洋士は思った。

レースの時間が近づいた。
スタンドはぎっしり人で埋まっている。
初めて走るプリンを近くで見たくて、森本調教師に頼んで、ゴールから二〇〇メートル手前のスタンド脇に、洋士は母と一緒に陣取っていた。
コース外柵のすぐ外で、馬に手が届きそうな芝生の上だった。

G1レースのファンファーレが鳴る。
皐月賞―二〇〇〇メートル芝コース。
ぐっと洋士は汗ばむ手を握りしめた。

ゲートが開いた。
馬はわれ先に飛び出し、コースを時計回りに猛然と走りだした。
スタンド前から向こう正面を進む馬を、哲夫はずっと双眼鏡で見守っていた。

「プリンは後ろから三番手ぐらいだ」

「大丈夫かな?」

「ああ、まだ勝負はわからない」
つづく・・・
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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
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『プリン』を読む

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