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『合 わ せ 鏡』 第八章

『合 わ せ 鏡』
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(八)

一週間後、早紀は院長室のソファに緊張した面持ちで座っていた。
殺風景な医局と違い、重厚な執務机と豪華な応接セットが、無言のうちに院長の権威を感じさせる。

約束の時間を五分ほど過ぎた頃、扉が開いて白衣姿の野崎が現れた。

「東海薬品さんだっけ、待たせてごめん」

直立不動の姿勢で事故紹介を済ませた早紀に、野崎は笑いながら着座するよう命じた。

「そんなに固くならないで。別に君を捕って食おうとしているわけじゃないんだから」

「でも、お忙しいところをお会いいただいて、本当に恐縮です…」

「いや、院長なんて閑職だよ。こんなに綺麗なMRさんなら、いつでも院長室へ遊びに来てもらって結構だよ」

野崎は相好を崩してソファに座った。

明治時代の軍人のような厳つい髭をつけた野崎だが、外見と違った気さくな態度に、早紀は少し安堵を覚えた。

しばらく世間話をした後、早紀は鞄を開けてノート・パソコンを取り出した。

「最近のMRはパソコンを使うのか」

「はい、秘密兵器です。私ごときが先生に高血圧治療を説明致しましても、釈迦に説法で怒られます。そこでDVDを使って、アドミットの特徴を紹介させて戴きます」

早紀は野崎の横に席を移すと、テーブルにパソコンを置き、DVDを起動させた。
画面に鮮やかな宣伝映像が浮かび、開発に携わった高名な医師がアダミットの薬理効果について説明を始めた。

野崎は興味深そうに画面を見入っている。

「ほう。T大学の川田教授が出ている。これは面白いね」

上機嫌な野崎の反応に早紀はほっとした。
アダミット処方増に、僅かだが曙光が見えたような気がした。

だが、ふと早紀が気を弛めた瞬間、太腿の野崎の毛むくじゃらな手が伸びてきた。

「あっ」

早紀はぎゅっと両脚を強張らせた。
そして掌を避けようと少し野崎から遠ざかった。

「アダミットはなかなかいい薬だね」

野崎は早紀の困惑をよそに、画面を見ながら平然と言った。
だがその掌は短いタイトスカートの中へと、強引に滑り込もうとしている。
早紀は両手を太腿の上に置き、野崎の侵入を抑えるのが必死だった。

「せ、先生…」

とうとう早紀は泣きそうな声をあげた。

「ああ、済まん、済まん。つい君のような美しい女性が隣に座ると、この手が勝手に動き出してしまってね」

野崎は早紀の太腿を這っていた左手を、右手でピシッと叩いて大声で笑った。
普段なら無礼な行為に断固たる態度をとる早紀だが、その権威ある髭とおどけた仕草のアンバランスに、思わずつられて笑ってしまった。

DVDを見終った野崎は、どっかりとソファに体を沈めた。

「アダミットの良さはわかったが、今使っている薬を切り替えるほどとは思えんな」

「そこを先生のお力で…」

沈黙が生じた。
野崎は髭と釣り合いの取れた厳しい眼差しに戻った。

「薬の力ではなく、私の力を頼るのであれば、それなりの代償が必要になる。その覚悟はできているのかな?」

「……」

「今すぐ結論を出せとは言わない。来週金沢で開催される学会で、私は講演をすることになっている。 もし君が、本気でアダミットを処方して欲しいのなら、一緒についてきたまえ」

野崎はそう告げると、二度軽く早紀の肩を叩いた。
頭を下げて廊下に出た早紀は、何故か激しく鼓動が高鳴り、しばらくその場を動けずにいた。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第七章

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(七)

高座中央病院の薬局は、外来受付の隣に大きな部屋を構えていた。
早紀が薬局のドアを開けると、白衣姿の葛西京子が一人で棚の薬を整理している。

「葛西先生、まだ帰られないのですか?」

「あら、谷口さん、六月から新しく採用する薬剤が増えるので、薬剤棚を開けておこうと思ってね」

京子は今年四十歳になる薬剤師である。
中学生の子供のいる人妻だか、その理知的な容貌と小柄でスリムな体型から、三十代半ばで十分通用するほど若く見える。

同じ薬科大学の先輩にあたり、早紀は特に親しくしてもらっていた。
立派に仕事をこなしながら、家庭にも深い愛情を注ぐ京子に、早紀は憧れに近い感情を抱いていた。

京子は手を休めて早紀に椅子を勧めた。

「アダミットの処方、あまり伸びないわね」

早紀の沈んだ顔を見て、京子は悩みを見透かしたようだった。

「ええ、それで困っているんです」

早紀は先ほどの田中医師の反応について相談してみた。

「暗黙のルール?」

京子はその言葉に眉をひそませた。

「田中先生の口振りでは、アダミットを使いたくても使えない掟があるみたいでした」

京子は腕組みをして、銀縁のメガネの奥に切れ長の瞳を輝かせた。

「…野崎院長のことかしら?」

クールな印象を与える京子の薄い口唇が、その名前を告げた時、早紀ははっとして、その男の顔を思い浮かべた。

病院の前で黒塗りの車に乗る野崎明を、何度か見たことがあった。
五十代前半だが、エネルギッシュな髭を蓄えた精悍な顔立ちをしていた。

大病院の院長ともなれば名誉職で、外来患者を診察することはあまりない。
また普段は院長室にこもって医局へは姿を見せないので、MRにすれば、営業の対象にならない雲の上の存在でしかなかった。

「でも院長先生が何故?」

「だって野崎院長は高血圧治療の権威よ。しかもアドミットのライバル薬の開発に携わった経緯もあるでしょ」

「ああ…」

早紀は目の前が真っ暗になった。
情報収集がたりなかったことを痛感し、課長との約束を悔やんだ。

京子はしばらく何も言わず黙っていたが、何かを決心したような顔で、ふぅと小さく息を吐いた。

「野崎院長に会ってみる?」

「えっ、面談できるんですか?」

「頼んであげてもいいわよ」

「…でも、高血圧の権威を説得できる自信は…」

早紀は小さく首を振った。

「それはあなた次第よ。私が与えられるのはチャンスだけ」

京子はきりっと瞳を見開いて早紀を見据えた。
がけっぷちに立つ早紀にできることは、ただ頷くことだけだった。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第六章

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(六)

白衣の看護婦が慌ただしく動き回る病院も、窓から差し込む西日が長い影をつくる時間になると、人の姿も疎らで、不気味なほど閑散としている。
早紀はこつこつと靴音を響かせ、医局へ通じる暗い廊下を歩いていた。

高座中央病院は、ベッド数三百を誇る高座市最大の医療施設である。
同時に、早紀が担当する神奈川県県央において、最も患者数が多い基幹病院でもあった。

先週、課長に威勢よく啖呵を切ったものの、高血圧治療薬アダミットの売上を倍増させるのは、容易なことではなかった。
だが早紀の心中には勝算がなくはなかった。
それは高座中央病院での処方を増やすことだった。

医薬品の売上を伸ばすオーソドックスな方法は、地区の中核となる病院で処方数を増やすことだ。腐るほど薬の数があるこの時代、医師も安心して使える薬がわからず迷っている。
だから地域の高度医療を担う大病院がアドミットを使えば、周囲の中小病院や開業医は、何もしなくても、右へ倣えで勝手に使ってくれるのだ。
だが肝心な高座中央病院で、アダミットの処方数は未だ低迷していた。

早紀は医局のドアを開けると、入院患者の回診を終えた若手の医師たちがテレビを見たり雑誌を読んだりしてくつろいでいた。
早紀は田中浩司の姿を見つけて近づいた。

「この間ご紹介したアダミットですが、何例かご処方戴けましたか?」

田中はこの病院で最も多い患者数を抱える中堅の内科医だった。
早紀は田中を何度か接待して、人間関係を築いてきた。
早紀の描いている目論見は、田中を落としてアダミットを処方させることだった。

「ああ、谷口さん、ごめん、なかなかその薬に合った患者さんがいなくてね」

「そうですか。でも降圧効果は他剤に負けませんし、副作用も少ないですから…」

「まあ、それはわかるんだけど、その、いろいろとしがらみがあってさ。暗黙のルールってやつかな」

「暗黙のルール?」

「あ、ごめん。ちょっと急患がいるから」

田中は口を濁すと、早紀から逃げるように医局を出て行った。

早紀は釈然としないものを感じながら医局を後にした。
高座中央病院の内科医師は、大半が同じような反応を示した。
だが今日初めて聞いた『暗黙のルール』という言葉に、早紀はアダミットの効能効果以外に、何か大きな壁があることを知らされた。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』  第五章

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(五)

男のものをくわえるのは好きだった。
スポンジのように軟らかい先端を、脈打つ血管が絡みつく網の柄―おぞましい異生き物のようなソレを口にする時、何故か早紀は、背筋がゾクゾクする興奮を覚えた。

「さ、早紀…もう、いきそうだよ」

まだ数分しか経っていないのに、智彦は眉間に皺を寄せて射精を堪えている。

(うふ、この表情が好きなの)

早紀は口唇と手に力をこめ、いっそう夫の肉茎を嬲った。

「も、もう…」

早紀が肉茎を口から離すと同時に、智彦は内腿をひくひくと麻痺させて射精した。
生温かい白濁液が勢いよく乳房に飛び散った。

「ごめん」

まだぼんやりとした目の智彦は、シャワーを手にして先の乳房に滴る精液を洗い流し始めた。

「ううん、智くんのをかけてもらって嬉しいわ。二回目はベッドでね」

早紀は甘えるように智彦に抱きついた。 
下腹部にあたる智彦の肉茎は、再び少しずつ硬直を取り戻していく。

早漏気味の智彦は、早紀が絶頂を登りつめる前に果ててしまうことが多かった。
そこでプライドを傷つけず持続力を補うため、最近は事前に一回射精させるようにしていた。

(好きで初心な男を選んだから、このぐらいの我慢は仕方ないか)

早紀は心中でそう呟いた。

智彦との結婚生活は幸せだった。 
自分の性格にこれ以上釣り合う男はいないと感謝している。

だが百パーセントの満足はありえない。
それを妥協するのが夫婦かもしれない。

理屈はわかっているつもりだが、体が熟すれば熟するほど、早紀はもやもやした物足りなさを強く意識してしまうのだった。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第四章

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(四)

もう三十路に近い早紀だが、まだその体は若い頃の張りを保っていた。
しかも年を経るごとに女の丸みを帯び、熟れた果実にも似た甘い香りを放つようになっていた。

背が高いため、痩せぎすに見られがちだった体型も、今は全身にほどよい脂肪が乗ってふくよかさを増している。
味気ない固いゴムのようだった乳房には、ふるふると震える軟らかな感触が備わってきた。
腰からヒップにかけても、女らしいむっちりとした質感を醸し出している。

ぎこちない手つきで乳房を洗う智彦の股間が、むくむくと脈動しているのが見えた。

「あ、あん…何か変な気持ちになるぅ」

早紀はわざと大きく胸で呼吸して、乳房を感じているように波打たせた。
自信を得たのか、智彦の手に力がこもる。 
早紀は少しずつ両脚を開き、智彦の男の本能を誘っていく。

「あう、智くん…智くん…」

智彦は導かれるように秘唇を指で弄り始めた。
だが女の扱いに熟練しきらない智彦の指先は、触ってほしい小さな肉芽の周囲をうろうろするだけだった。
早紀は仕方なく感じる素振りをして腰を動かし、逆に肉芽で指を追い求めなければならなかった。

「智くん、気持ちいいよ…」

早紀は懸命に夫を励ました。
セックスに関しては初心過ぎる智彦だが、早紀はそれでも十分満足していた。
それは男が女に貞淑さを求める感覚に近いかもしれない。

じん…、と演技ではない痺れが走った。

「智くん…今度は私がしてあげる」

智彦を浴槽の縁に腰かけさせると、早紀は彼の足を開いて股間を前に跪いた。
愛らしい肉茎は、すでに天を指してピクッ、ピクッと脈打っている。
早紀は硬直した肉茎をしばらく手で弄びながら、上目遣いに智彦の上気していく顔を楽しんだ。

「ああ、早紀…」

智彦がうめいた。
早紀は口唇をすぼめ、ゆっくりと熱棒を飲み込んだ。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第三章

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(三)

早紀は業界中堅に位置する東海薬品でMRをしている。
MRとは、医薬情報担当者の略称で、病院や開業医の医師に、自社の薬剤情報を伝えるのが仕事である。

しかし、それはあくまでも表向きで、実際は、あらゆる手段を講じて医師と人間関係をつくり、薬剤を使わせる営業職だ。
世にごまんと薬はあるが、効果はどんぐりの背比べで、医師にとってはどれを処方しても大差はない。

そこで金や物をばらまき、接待づけで恩を売り、自社の薬を使わせるのがMRの実際の仕事となる。
そんな激務のため、かつてはMRと言えば男性の仕事だったが、今は人あたりの良さから女性も多くその職についている。

早紀は両脚を伸ばし湯船に寝そべった。

「あのハゲ課長ったら、思い出しただけで頭にきちゃう」

東海薬品は今春、高血圧治療薬アダミットを上市した。
だが売り上げは今ひとつかんばしくなかった。

そこで『営業はフットワーク』を座右の銘とする課長は、訪問軒数のノルマを倍にすると命じた。
課員たちは皆、表立って口には出さないが、課長の前時代的な営業戦術にげんなりしていた。

「だから私が言ってやったのよ。闇雲に訪問軒数を上げるより、セールス・トークをもう一度勉強し直した方がいいって」

「早紀は気が強いなぁ…俺だったらそんなこと思っていても言えないよ」

「でも正論だもの。そうしたら課長ったら、マンガじゃないけど、湯気が出るほど頭を真っ赤にして怒りだしちゃってさ。女のくせに生意気な、文句があるなら実績を上げてから言えって」

「…はあ」

「こっちも売り言葉に買い言葉よ。もし私が実績を上げたら、自ら人事部に課長降格を申し出るよう約束させてやったわ」

「もし実績が上がらなかったら?」

「私が会社を辞めるって啖呵切ってやったの」

酔いも手伝って、早紀は隣室に聞こえそうな声で大笑した。
智彦は口をあんぐりと開けたまま、表情が凍りついている。

早紀は湯船から出ると、課長と仲直りした方がいいと心配する智彦の前に、腰掛けを置いて座った。

「ねえ、私の体を洗って」

「あ、ああ…」

早紀が差し出した手を、智彦はどこか恐る恐る洗い始めた。
俯きがちで早紀の顔を見ようともしない。

(可愛い…もう少しからかっちゃおう)

早紀は智彦の手を取ると、豊かな乳房に押し当てた。

「ねえ、胸も洗って」

智彦は黙って頷いたが、まるで高価な壺を磨くように、力なく乳房の表面を擦るばかりだった。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第二章

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(二)

早紀は二十八歳。
薬科大学を卒業して製薬会社に勤務している。

智彦は早紀より一つ年下の二十七歳で、食品卸会社のセールスをしている。
結婚したのはちょうど一年前、紫陽花が雲天に映える梅雨の季節だった。

二人は共稼ぎの収入を充てに、ここ横浜郊外のマンションを買い、甘さの残る新婚生活を営んでいた。

出会いはありきたりな友人の紹介だった。
当時、二十代半ばの早紀には言い寄ってくる男が掃いて捨てるほどいた。
そんな中、智彦の印象は絵に描いたような平凡な男でしかなかった。

ただ逆にそれが早紀の心を惹いた。
勝気で男勝りな早紀はデートを重ねるうち、温和で優しい智彦に心の安らぎを覚えるようになっていった。

自然に恋愛中から早紀が主導権を握り、智彦はそれに従うという役割が定着した。
早紀は強引な男にも魅力を感じる。
だがそんな男があれこれ口うるさい亭主関白タイプならば、黙って言うことを聞いてくれる智彦の方が、永い人生の伴侶としては好ましいと思った。

腕まくりした智彦が戻ってきた。

「風呂の支度ができたよ」

「ありがとう」

早紀は窮屈なスーツを脱ぎ捨てた。
そしてソファに座ったまま、長い両脚を宙に浮かせてストッキングを下ろしていく。
智彦の視線を意識しながら、踊り子が観客を焦らすように、ゆっくりと白い素足を曝していく。

「智くん、一緒に入らない?」

早紀は酔いに任せて智彦を誘った。
恋人時代、ラブホテルで一緒に入浴したことはあったが、結婚してからは初めてだった。

「…まあ、酔って一人で風呂に入るのも危ないし…仕方ないな」

内心嬉しくてしょうがないくせに、真面目な顔で建前にこだわる智彦が可笑しかった。
早紀は智彦に先に入るように命じ、もう一杯水をグラスに注いで飲み干した。

早紀は全裸になると、智彦が待っている浴室の扉を開けた。

「お待たせ」

湯船に浸かっている智彦は、どこを見ればいいのかわからないのか、目線がそわそわして落ち着かない。

早紀は子供のように湯船に飛び込んだ。
ざあっと湯が溢れた。

「もったいないなあ」

「いいじゃない。一緒にお風呂に入るなんて久しぶりなんだから」

広くもない湯船だ。 智彦と肌が密着する。

「俺、先に洗うわ」

智彦は股間を早紀から隠すようにして湯船から出た。

「今日ね、課長と喧嘩しちゃった。それで会社の後輩たちと一緒に飲んでいたの」

「ふうん、憂さ晴らしか」

智彦は体を洗いながら、どこか上の空な様子で相槌を打った。

つづく…

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『合 わ せ 鏡』 第一章

合わせ鏡

野崎は早紀の体だけでなく、心の内にまで君臨しようとしていた。
夫への罪悪感も消え 早紀はただ犯される喜びだけを貪った

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(一)
地震でもないのに部屋が揺れている。
まっすぐ歩いているつもりなのに、足がもつれて右へ左へとよろめいてしまう。

(ちょっと飲み過ぎたかしら)

谷口早紀は転がるようにソファへ倒れ込んだ。
顔が熱く火照り、ドクドクと高鳴る心音が鼓動を震わせる。

「智くん、水を持ってきて」

早紀は焼けるような喉の渇きに、玄関の鍵を閉めに行った夫の智彦を呼んだ。

「今持っていく」

そう応えると、智彦は小走りでキッチンに向かい、冷蔵庫から氷を取り出し、ミネラルウォーターをグラスに注いでくれる。

「ねえ、早く頂戴」

短いタイト・スカートを穿いたまま、ソファで大の字に脚を投げだした早紀は、鼻にかかった甘い声で智彦を急かした。

「お抱え運転手の後はウエイターが…まったく人使いが荒いよな」

ぶつぶつ文句を言いながら、智彦はグラスを差し出した。

「何か言った?」

すかさず早紀は切り返す。

「べ、別に…でもそんなに酒を飲んだら体に毒だよ。気をつけないと」

「わかっているわよ。私だって好きで飲んだわけじゃないもの」

冷たい水を一気に飲み干し、早紀はほっと一息ついた。

ふと視線を感じた。
見ると、フローリングに胡坐をかいた智彦が、早紀のスカートの中をちらちら覗いている。

「智くん、どこを見ているの?」

「あ、その…」

智彦はびくっと肩をすぼめ、おどおどした目を宙に彷徨わせた。

「罰としてお風呂の用意をして下さいね」

「は、はい」

穏やかな口調だが、拒むことが許されない女主人の命令に、智彦は再び小走りでバスルームへ向かった。

(可愛い人…)

甲斐甲斐しい夫の後ろ姿に、早紀はふっと口元に笑みを漏らした。

つづく…

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『捨 て 犬』 最終章

『捨 て 犬』

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(十五 )

午前中の診察を終えた富岡クリニックは、まだ十人以上の患者たちが、待合室で薬と会計を待っていた。
見覚えのある髪の薄い丸顔の男が、つかつかと事務室に入ってきた。

「失礼します。新大阪製薬の早坂です。先生はお手隙でしょうか?」

「おう、早さん」

机で帳簿をつけていた梅原は、立ち上がって早坂を手招きした。

「梅さん、ずいぶん事務長姿が板についてきたな」

梅原は白衣を指差して大笑いすると、早坂は販促品のボックス・ティッシュを机の上に五つも積み上げた。

梅原は新東京製薬を退職した後、富岡クリニックで事務長として働いている。

ホテルでの夜、英子を抱いた後、
「仕事でも私を支えて下さい」
と、泣いてせがまれたからだった。

英子は、富岡クリニックをベッド数五十ほどの病院にする計画を持っていた。
病院を設立するとなれば、建設業者や銀行との交渉、看護婦や栄養士の労務管理等、とても医療の片手間ではできない仕事が増える。
その夢の実現のために、信頼できるパートナーが欲しかったのだ。

英子は正直に謝った。
あの雪の日に退職させるよう支店長に連絡したのも、シンポジウムの後、ホテルの部屋に招いたのも、全ては梅原をパートナーとして引き抜くための計画だったのだ。

(この人が欲しい)

頬を叩かれた時、英子はそう直感したと言う。
ホテルでは緊張のあまり高飛車な態度をとったが、バスローブで迎えたのは、梅原に抱かれるのを心待ちにしていたからだった。

考えようによっては、体を餌にしたと勘ぐられても仕方ないが、梅原は悪い気がしなかった。
プライドの高い英子が、体を差し出してまで梅原を頼ってきたのだ。

たとえ一人の女でも、そこまでされれば男冥利に尽きるというものだ。
診察を終えた英子が事務室に入ってきた。

「あら、早坂さん」

「先生、お世話になっています。今、少しお時間戴けますか?」

目ざとい早坂は英子の隣に瞬間移動した。

「ごめんなさいね。今日はこれから建設会社との打ち合わせで、梅原さんと外出しなければならないの」

英子は明るくなった。
気持ちにゆとりができたのか、MRに対しても穏やかに接するようになっていた。

「じゃあ、梅原さん。先に車で待っていますから」

英子はそう言うと、早坂に頭を下げて事務所を出て行った。
梅原も白衣を脱いで、外出する準備を始めた。
背後で、薬剤師と事務員のクスクス笑う声が聞こえた。

「先生はいつも、梅原さん、梅原さん、ばかりよね。まるで恋人同士みたい」

梅原は聞こえないふりをした。

建設業者と昼食を取りながら打ち合わせするのは本当だった。
だがその後、午後の診察が始まる三時まで、梅原と英子は近くのラブホテルで二人だけの時間を過ごす。
それが日課になっていた。

(仕方ない…公私共に頼られたら)

そうニヒルに呟きながらも梅原は、捨て犬を拾ってくれた飼い主の体を、今日はどうやって喜ばせてやろうかと思い巡らせていた。

―閉幕―

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『捨 て 犬』 第十四章

『捨 て 犬』

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(十四 )

顔を真っ赤に上気させ、息も絶え絶えの英子は、縋るように梅原の腕を何度も引いた。

「も、もうダメ…お願い…入れて…あなたの女にして!」

梅原は濡れた蜜壺に肉茎を宛がった。
我慢できない英子は、腰を動かし自分からそれをくわえこんだ。

「ああっ」

英子は大きく喘ぐと、梅原にしがみついてきた。
その蜜壺は蕩けるほど熱く、軟らかい淫肉がじわじわと梅原を包み込んでいく。

「気持ちいい…こんなの初めて…」

梅原は走り出す汽車のように、徐々に肉茎を突くリズムを速めた。
熟女の淫肉の濃厚な粘着感が心地よい。
英子もその動きに合わせて腰を振り、絶頂に登りつめていく。

「好きにして、私を好きにして…」

英子はうわ言を繰り返し、豊かな乳房を上下にゆさゆさと揺らした。
熟女らしい獰猛なまでの激しさに、梅原も一層征服欲を掻き立てられていく。

「どうだ、気持ちいいか」

「ああ、も、もうたまらないの、だめ、いっちゃう、いっちゃう…」

英子は全身を硬直させて絶頂を迎えた。
梅原もべっとりと蜜液が滴る肉茎を抜くと、真っ白い下腹部の上に射精した。

部屋には荒い息遣いだけが残った。

気を失っている英子の頬を撫でてみた。
憑き物が落ちたように、安らかな表情をしている。

梅原は性欲を満たしたことよりも、その英子の寝顔に満足感を覚えた。

つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

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