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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十五)

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七.迷宮の案内者 (十五)

サンカの写真だった。

サンカa
サンカb
サンカc
サンカd

そこにはサンカの一家族を追ったドキュメントがあった。写真の中でサンカと呼ばれる人々は、テントのような住居に住み、箕を作ったり、焼湯と言う露天風呂に入ったりしている。

「乳房丸出しで・・焼湯?」

「畠山君、そこに注目するかね。焼湯とは川辺の窪地をテントで覆い、そこに焼いた石を入れる簡易露天風呂だよ」

明らかに厭そうな表情で、降矢木はそう畠山の愚問に答えた。

ここに疑惑があると降矢木は畠山の妄想を遮った。

「これは三角の娘さんの話だが、サンカは知り合いの一家族だけで、後はエキストラだったとも言われている。三角が前以って着物を渡して、都合がいいように彼等を演出したとも言われている」

「それってヤラセじゃないですか。三角寛が名誉のためにサンカを歪曲したのですね?」

月絵は学問への冒瀆だと憤った。

「まあ確かなことはわからないが、現在流布している超人的異民族のサンカは、ほとんどが三角の創作とするのが定説になっている」

「でも先生・・実際にインチキだとされているサンカ文字が、麻美さんの部屋にあったのは偶然でしょうか?」

「うん、昭和初期のオカルトが、現代に生き返ったみたいな話だな」

降矢木はため息をつくと、懐手をして天井を睨みつけた。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十四)

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七.迷宮の案内者 (十四)

再び降矢木は三角寛について言及する。

「月絵君が言う通り、サンカはマタギや木地師と同様に、山奥で平和に暮らす職能集団だった。ところが三角寛と言う男が、彼等を破天荒な異民族に祀り上げてしまったのだよ」

説教強盗で名を上げた新聞記者三角寛は、警察や文壇に取り入り、サンカ研究とサンカ小説の第一人者にのし上がった。

昭和十年あたりからサンカ小説を発表し始めた三角は、大衆小説作家として一躍脚光を浴びることになる。

小説の中でサンカは、山々を縦横無尽に歩行できる超人的な能力を持ち、隠語を操って世間を謀り、任侠さながらに親分子分の掟を守る漂泊民として描かれる。

突如身近に現れた異民族に人々は熱狂した。

それは鬱屈した時代の英雄感覚だったのかもしれない。

だがそこからサンカは一人歩きする。

三角は『山窩族の社会の研究』という論文で、東洋大学から文学博士の学位を取る。

それは、神秘的な生活様式から、全国的な統制組織の存在と規律、古代天皇まで遡る始祖古伝承など、平地民とは異民族であるサンカの姿を浮き彫りにしていた。

月絵は腕組みした。

「大学から学位を貰ったなら、三角寛のサンカ研究は本当じゃないんですか?」

「金で買ったとかいろんな噂がある。今となっては何の証拠もないけどね。大体サンカについての実証など何もないのだ。三角の根拠は、全てサンカの誰某から聞いたと言う伝聞に過ぎない」

「インチキなんですか?」

「わからない。ただ推論するならば、三角が異常な妄想力を具現化する努力をしたのは事実だろう」

と語った降矢木は、荒い画素の白黒写真を取り出した。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十三)

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七.迷宮の案内者 (十三)

降矢木は事も無げに答えた。

「ああ、それは彼等が定住民ではなく、戸籍がない漂泊者だったからだろうね」

「戸籍がない?」

「一定の場所に住んでいないから、いつ子供が生まれても記録のしようがないだろう。正確な数は不明だが、官憲が把握できない人々が、明治時代には二十万人、昭和に入っても一万人いたと言われている」

「でも・・」

「国家の人民統治は、律令制度の昔から、民を土地に縛りつけることで成り立ってきたんだよ。人民に土地を与えることで、租税労役兵役を課することの根源としたわけだ。だから土地に縛られない者は、統治できない不穏分子と警戒されたのさ」

目を白黒させた畠山が割り込んできた。

「それなら欧州のジプシーも、長年に亘る迫害の歴史があったと聞きます」

「そうだね、ジプシー、自称ロマも、サンカと似たところがある」

降矢木はそう答えると、ジプシーについての知識を頭脳の奥から引っ張り出した。

ジプシーは自らをロマと呼び、西暦1000年頃にインドから欧州へ移動した民族である。

定住の地を持たないロマは、古くは奴隷として扱われ、旅芸人、占い師、季節労働者として差別されてきた。

ナチスドイツにおいては、ユダヤ人と同様、劣等民族として五十万人ほどが殺害された。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十二)

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七.迷宮の案内者 (十二)

降矢木はしばらく間を置いて言った。

「三角寛。サンカ研究家であり、サンカ小説家だ」

「ミスミカン?」

秋月は聞いたことがない名前だと腕組みをした。

「秋月さん、説教強盗はご存じですか?」

「ああ、盗みを働いた家の住人に、戸締りが悪いとか犬を飼えとか説教した強盗のことだろう・・確か昭和の初め頃の話だと聞いたことがある」

「説教強盗と言うネーミングは、当時朝日新聞の記者だった三角寛が広めたものです」

そう言うと、降矢木は気難しげな顔をいっそう気難しげに見せた。

説教強盗と呼ばれた妻木松吉は、大正十五年から昭和四年にかけて、東京で百件ほどの強盗窃盗を働いた。

紳士的な物言いと親切な防犯説教で世間を騒がせ、新聞社が捕らえた者に賞金をかけたり、帝国議会でも取り沙汰されたりもした。

逮捕後は無期懲役の判決を受けたが、模範囚だった妻木は昭和二十二年に恩赦で仮出所し、その後は警察などの防犯講演に協力するなど、平成元年までその不可思議な生涯は続いた。

降矢木の博識は縦横無尽に展開する。

「警視庁詰めだった三角寛は、当時官憲から危険分子と目されていたサンカについて知識を得たのだと思います。現在は否定されていますが、説教強盗の妻木がサンカ出身だという説もあったほどで・・」

三角寛の話に熱が入る降矢木に、月絵はふと湧いた疑問をぶつけた。

「どうしてサンカは悪者扱いされていたんですか? それは都市から逃げた泥棒もいたでしょうけど、山で竹細工をつくって平和に暮らしていたんでしょう?」

そんなことかとでも言わんばかりに、降矢木は冷めた目で月絵を見下ろした。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十一)

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七.迷宮の案内者 (十一)

月絵でも知っている『遠野物語』は、明治四十三年に柳田國男が発表した作品である。

天狗、河童、山人など、遠野に残る民話を聞き書きした内容で、日本における民俗学の先駆けとなる名著と評価されている。

「つまりサンカは、元々山で猟をするマタギや、椀などの木工品を作る木地師と並んで、平地民から山人と畏怖された漂泊の民と考えられているのだよ」

昔の村人が見た天狗や河童、妖怪などの正体は今もわからないが、山中生活者がその伝説の一端を担っていたことは、誰の想像にも難くない。

月絵は頷いた。

「つまり江戸や明治の頃、山の中を漂泊しながら、竹細工や魚を里人に売って暮らしていたのがサンカなんですね」

「そうだ。元々サンカは純粋な山の民だったのだろう。深山は平地民の立ち入ることが許されない異界だが、社会制度が整い始めた江戸や明治期に、平地の貧窮者や犯罪者が流民となって山へ逃げ込んだ。それが純然たるサンカと交じり合って、世間の目を避ける独特の人種意識を生み出した」

「だからあんな暗号みたいな文字を使ったりするんですか?」

「彼等が純粋な山の民だった頃から、神代文字を使っていた証拠はない。サンカが異端な秘密結社の如き扱いを受けるようになったのは、昭和初期に現れたある男の影響によるものだ」

「ある男?」

「そう、世間を騒然とさせた『東日流外三郡誌』を偽作した和田氏のように、その男は自分の妄想でサンカを異界の民族に仕立て上げたのだよ」

憤然と語気を荒げる降矢木に、三人の聴衆は思わず息を呑んだ。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(十)

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七.迷宮の案内者 (十)

そもそもサンカとは、山窩、山家、散家とも書かれ、地域によってテンバ、ポンス、オゲ、カワハラコジキ、カンジン等、まちまちの名前で呼ばれる。

サンカの生活形態については、民俗学者の後藤興善が、『又鬼と山窩』の中で次のように記述している。

「彼等は、定住して農を業とせず、山裾や川原に小屋を掛け、テントを張って、箕、籠、簓、風車などの竹細工をなし、下駄或いは棕櫚箒などを作り、河川の魚を漁し、山の自然薯を掘り、猟もし、その手細工品や獲物を近くの村や町に売り鬻いで生活してゐる」

また、同じく柳田國男は、『イタカ及びサンカ』という著作で触れている。

「若し、夫れ漂泊するサンカに至りては、旅人、若し少しく注意すれば、瘻々途上にて遭遇することを知るなるべし。衣類など著しく普通民より不潔にして、眼光の農夫に比して遥に鋭き者、妻を伴ひ小児を負ひ、大なる風呂敷に二貫目内外と思はるる小荷物を包み、足拵へなどは随分甲斐々々しきが、さも用事ありげに急ぎ足にて我々とすれちがふことあり。これ大抵は、サンカ也」

降矢木の暗誦を聞きながら、月絵は小首を傾げた。

「柳田國男って言ったら、民俗学の第一人者じゃないですか・・でも柳田國男が著作を残しているのに、あまりサンカのことは世間に知られていませんね」

「そうだね、月絵君。眼光の鋭き者と言う件などは、『遠野物語』に登場する山人を思わせるじゃないか」

月絵の指摘に対して、降矢木は嬉しそうに微笑んだ。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(九)

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七.迷宮の案内者 (九)

降矢木は再び便箋を取り出した。

「古代古史の真偽はさておき、何故神代文字の手紙が麻美さんの部屋にあったかだな」

そこへまた恐る恐る畠山が質問した。

「先生、これは何と書かれているか解読できるのですか?」

「簡単だよ」

便箋を舐めるように見た降矢木は、おやっと意外そうな表情で首を捻った。

「これは『上記』の神代文字に似ているが、よく見るとちょっと違うみたいだな・・そうか、まてよ」

降矢木はそう言うと、また堆く積み上げられた本の山を漁り始めた。

「これだ」

部屋の奥から探し当てた本を降矢木は高々と掲げた。

『サンカ研究』田中勝也著。

降矢木は興奮したように、指を舐めながらページを捲った。

「ほら、ここだ」

開いたページには、また不可思議な絵文字の一覧表が書かれていた。

【サンカ文字】
サンカ文字

「先生、これは何ですか?」

「これはね、古代古史の研究者であり、サンカの研究にも詳しい田中氏が、『上記』の神代文字とサンカ文字を比較したものだよ」

「サンカ文字?」

また聞いたこともない言葉に、月絵は慌てて降矢木に問い質した。

「何ですか、サンカって?」

「ん、月絵君はサンカを知らないのか? 畠山君は知っているだろう?」

呆れた顔をした降矢木に、月絵と畠山、そして秋月も一様に首を振った。

「秋月さんまで・・?」

降矢木は三人を部屋のソファに招き、サンカについてぽつりぽつりと話し始めた。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(八)

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七.迷宮の案内者 (八)

鎌倉時代の初めに、大友能直が古文書を基に編纂したと言われる『上記』は、豊国文字と呼ばれる神代文字で書かれていたとされている。

その原書は残されていないが、江戸から明治時代にかけて写本が発見され、その真偽については今も定かではない。

記載されるのは、古代王朝の系譜の他、暦学や医学、風土記等の博物誌的な内容となっている。

しかし正統とされる古事記や日本書紀とは、その内容を異にする部分がかなり含まれている。

例えば『上記』は、古事記と同様に国生みの話から始まるが、日本のみならず、ロシアや琉球など当時海外の領土まで生んでいる。

また皇統についても、『記紀』では、天孫降臨したニニギノミコト→山幸彦として有名なホホデミ→ウガヤフキアエズ→神武天皇と連なって行くが、『上記』ではウガヤフキアエズ以降、七十二代に亘るウガヤ王朝が存在したとされる。

畠山がやっとのことで口を挟んだ。

「最近論争となった『東日流外三郡誌』も、結局偽書だったと考えられていますしね」

「そうだね、鎌倉時代以前、青森の十三湊に欧州人や中東人の貿易拠点があったなんて、真贋論争するレベルの話ではないよ」

キリストが青森県の戸来村で死んだとする『竹内文書』同様、この『上記』も荒唐無稽な偽書として歴史の表舞台から黙殺されてきたと降矢木は語った。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(七)

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七.迷宮の案内者 (七)

だが秋月の忠告など、降矢木には微塵も届いていなかった。降矢木は部屋中を引っ掻き回して、一冊の本を取り上げた。

「よかった。もう本牧へ持って行ってしまったかと思ったよ」

降矢木は蔵書を保管するために、横浜の本牧にある4LDKのマンションを所有していた。

元々はそこで暮らしていたのだが、溢れる蔵書に押し出されて、今ではこの店舗で寝起きするようになっていた。

おそらくこの部屋も、あと数カ月で退去を迫られることになるだろう。

降矢木は比較的新しい冊子を捲った。

「これは明治十年に吉良義風が書いた『上記鈔訳』で、近代デジタルライブラリーのデータを印刷したものです」

降矢木はその冊子のページを捲って秋月と月絵に見せた。

上記
『上記』

月絵は思わず大声で叫んだ。

「似ている。麻美さんの部屋にあった便箋の文字にそっくり」

「これは神代文字だよ。日本に漢字が伝来する以前に、用いられていたとされる古代文字のことだ」

「降矢木君、あの古事記だって漢字で書かれていたんだろう。それ以前の日本に文字はなかったと記憶しているのだが・・」

秋月は首を傾げた。

「ええ、だから『上記』を始めとして、神代文字で書かれていた『竹内文書』や『ホツマツタエ』など、古史古伝の類は偽書と言われているのです」

降矢木はそう答えると、『上記』について説明を始めた。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(六)

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七.迷宮の案内者 (六)

今しがたまで雲ひとつなかった空が俄かに掻き曇り、大粒の雨が激しく降り出した。

月絵は持っていたバッグを頭に載せて、慌てて降矢木ファーマシーへ駆け込んだ。

「わあ、酷い夕立ですね」

「いや、月絵ちゃん。昔の夕立ってのはもっと優しかったよ。ざっと雨が降り出すと、夏の陽射しで熱くなった土の匂いがしてね。それに比べると、今のゲリラ豪雨とやらは風情の欠片もない」

秋月はハンカチで頭を拭きながら、苦々しい表情でガラス戸に打ちつける雨を睨んだ。

不意に背後で声がした。

「こりゃ、御三人揃ってお帰りなさい」

官能文芸誌の編集者、畠山健一だった。

眼鏡の水滴を拭いながら、降矢木は不機嫌そうな顔で畠山に言った。

「原稿はちゃんと昨日送信しておいたぞ」

「いえいえ、別に原稿を取りに来たわけではありません。ちょっと近くで用があったついでに・・」

頭を掻きながら、畠山はちらっと月絵を横目で見た。

肩まで伸びた髪が濡れて光沢を帯び、白地のTシャツが雨に濡れてブラジャーが透けている。

ぴったりと肌に貼りついたシャツの生地が妙に艶めかしい。

「あっ、畠山さん、何をジロジロ見ているんですか?」

畠山の粘っこい視線に気づいた月絵が大声を上げた。

「い、いや・・その・・」

「おい、編集野郎、まだ月絵ちゃんにちょっかい出そうっていうのかい。女心がわからねえ野郎だなあ」

秋月は畠山を怒鳴りつけたが、実はその文句の矛先は降矢木へ向いていた。

つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
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臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
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だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
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