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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十四)

『人外境の花嫁』 

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四.黄昏時の掠奪者 (十四)

麻美は昭和五十年生まれだから、母が故郷へ戻って父親と再会するのもその頃だ。

ならば足立寛三という人物が、麻美の父親なのだろうか?

後生大事にしまっていた手紙。

だがそこまでは断じ切れない。

足立寛三なる人物が、大阪水商売時代の贔屓客である可能性も十分ある。

やはり鍵はこの絵文字だった。

漢字の成り立ちは絵文字だったと言われるが、それに似ていないこともない。

或いは何かの暗号であろうか。

仲間のことを喋れば殺されると母は言っていた。

それでこのような絵文字を通信手段に用いていたのか。

いずれにしても、この絵文字が麻美の父を知る唯一の手掛かりだった。

その解読を頼むため、麻美は降矢木の許へ立ち寄った。

だが焼餅焼きのアルバイト娘に邪魔されてしまったのだ。

降矢木は麻美の得意客である。

だが明らかに変な客でもあった。

金を払ってソープへ遊びに来たのに、マットの上で熟睡して、何もしないで帰ることがよくある。

裸になった麻美を無視して読書に耽ることもあれば、麻美の男性遍歴をずっと聞いていることもある。

とにかく変人だった。

だがその博識ぶりは驚異的で、勉強が得意でなかった麻美には、まるで百科事典が歩いているように思えた。

(今度また降矢木先生が店へ来た時に頼めばいいか・・)

麻美はソファに座ったまま、絵文字の入った封筒をテーブルの上に置いた。

不意に玄関のチャイムが鳴った。

「白クマ印の宅急便です」

「は~い」

麻美は軽くコンコンと頭を叩いて気持ちを切り替えると、サイドボードから印鑑を出して玄関へ向かった。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十三)

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四.黄昏時の掠奪者 (十三)

麻美はソファに身を埋めた。

「きっと父ちゃんは、お前を優しく迎えてくれるだろうよ」

母の声が蘇る。

母が今生きていれば六十五歳になる。

母が子供の頃、テキヤだった父と初めて出会ったと言う。

ならば父は母より十歳以上年上のはずだ。

血は水よりも濃い。

(父はまだ生きているかもしれない)

人生には必ず屈折点がある。

独りぼっちで生きてきた麻美は、三十年以上も放ったらかされた父親に初めて会ってみたいと思った。

だが父の住まいどころか、その名前もわからない。

麻美はサイドボードから、古めかしい一枚の封筒を取り出した。

幼い頃、母の遺物を片づけていた時に、偶然に三面鏡の引き出しから見つけたものだった。

表書きは、大阪の住所と母の名が日本語で書かれている。

裏には足立寛三とのみ記されていた。

消印は雨に滲んだのか、昭和四十八年としか読みとれなかった。

そして封筒の中に納まる便箋には、不思議な文字が描かれていた。

それは見たこともない絵文字だった。

母のメモ

これはおそらく足立寛三という人物から、大阪へ出稼ぎに出ていた母に宛てた手紙に違いない。

母はこの手紙を見て、大阪から山里へ戻ろうとしたのではないだろうか。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十二)

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四.黄昏時の掠奪者 (十二)

麻美はバルコニーで頬杖をついたまま、小さくため息を漏らした。

(・・母ちゃん)

夕焼けは徐々に赤紫色へと移ろい、夜の帳が歓楽街に命を吹き込もうとしている。

母はそれから間もなく亡くなった。

心筋梗塞だった。

麻美が小学校から帰ると、母はシミーズ姿で三面鏡の前で倒れていた。

麻美は独りぼっちになった。

身寄り頼りのない麻美は、養護施設で心を開かない暗い青春を送った。

そして施設を出てからは、母と同じ水商売の世界へ身を投じたのだった。

麻美は呟いた。

(ずっと独りぼっちだった・・)

身寄りはない。

男達に熟女ソープ嬢とチヤホヤされるうちはいい。

だが麻美には、心から愛してくれる男性も、心の底から寄り添いたいと願う男性もいなかった。

無縁死。

日本では身元不明や生き倒れの死者が、年間三万二千人もいると言う。

行旅死亡人として処理される彼等は、その大半が飢餓死と凍死であるらしい。

他人事ではない。

あと数年もすれば、秋月のソープランドを辞める日が来る。

そこから麻美は何を頼りに生きるのか。

共白髪となるまで、麻美を愛してくれる伴侶は現れるのか。

(もう独りぼっちは嫌っ!)

麻美は再びため息をつくと、ネオンが煌めき始めた横浜の夜景を背に、独りぼっちの部屋へ戻って行った。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十一)

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四.黄昏時の掠奪者 (十一)

でも山奥に定住しても、もう箕つくりだけじゃ生きていけなかった。猫の額みたいな畑を耕しても、とても家族が飯を食うほどは稼げなかった。

母ちゃんは一人で大阪へ出て働いた。

でもね、麻美が言う通り、小学校も出ていない母ちゃんに、会社の仕事なんかできっこないじゃないか。

流れ流れてさ。

都会の生活に疲れた母ちゃんは、十年以上前かな、三十歳を過ぎてまた故郷に帰ったんだよ。

そこで父ちゃんと再会した。

ああ、父ちゃんのことは昔から知っていたよ。

子供の頃、母ちゃん達の仲間に加わったテキヤでね。

知らないかい、テキヤ。

ああ、フーテンの寅さんみたいな商売さ。

たまたま立ち寄った山里の縁日で、ヨーヨーの屋台を出していてね。

テキヤを辞めて、母ちゃん達について来たんだよ。

母ちゃんは子供だったから、その時は何とも思わなかったけど、大阪から帰ると父ちゃんは溶け込みした村の長になっていた。

頭のいい人でね、母ちゃんは子供の頃から父ちゃんが好きだったのかもしれないね。

母ちゃんは父ちゃんと夫婦になった。

でも父ちゃんは仲間の違う女と結婚していたからさ、母ちゃんは麻美を身籠ったけど、身を引いて東京へ流れてきたんだよ。

他人のものに手を出さない、それが山の民の掟だからね。

うん、お前の父ちゃんはまだあの山里で暮らしているはずだ。

お前が大きくなったら、会いにいったらいい。

大人になった麻美を父ちゃんに見せてあげな。

きっと父ちゃんはお前を優しく迎えてくれるだろうよ。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(十)

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四.黄昏時の掠奪者 (十)

信じられないって顔だね。

でも母ちゃん達の他にも、そんな暮らしをする人達が日本にたくさんいた。

子供の頃、大きな結婚式があってね。

二三百人はいたかね、大勢の仲間が河原に集まって宴会をしたことがあったよ。

そりゃ賑やかだった。同じ暮らしをしている人がたくさんいることに、母ちゃんは吃驚したもんだよ。

昔は日本に何万人もいたって聞いた。

母ちゃんは知らなかったけど、仲間同士のつながりがあったらしい。

母ちゃん達の三家族にも親分はいたし、地方ごとにそのまた親分がいるって教えられた。

その親分衆を束ねているのが、日本で一人、母ちゃん達の総理大臣だってこともね。

ああ、学校では習わないよ。

母ちゃん達の仲間は、日本の国から憎まれてきたからね。

自分達の身分を世間に隠して生きてきたんだ。

仲間のことを喋れば殺された。

母ちゃんは麻美が娘だから教えるんだ。他の人には一切話したこともないよ。

こんな秘密をばらしたら仲間が殺しに来るからね。

あはは、そんなに恐がらなくてもいいよ。

それは昔の話だから。

昭和三十年代の半ばになると、プラスチックが世間に広まって、箕や籠が売れなくなってしまってね。

母ちゃん達は山を歩く生活ができなくなったんだ。

溶け込みと言ってね。

母ちゃん達も家を建てて、山奥に住むようになったんだ。

もちろん戸籍もつくってね。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(九)

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四.黄昏時の掠奪者 (九)

ああ、商売はしていたよ。

麻美は箕を知っているかい?

お百姓が米やアワを運んだり、実と殻を分けたりする竹でできた道具だよ。

大人は山で採った竹や藤を編んで、箕とか籠、ザルなんかの竹細工をつくっていたな。

それを村や町に売りに行くんだ。

もちろん箕の修理を引き受けたり、子供が獲った川魚を売ったりもしたよ。

そのお足で米や味噌、お酒を村で買うのさ。

そんな商売だから、小さな村にずっと居ついても仕方ないわけさ。

山で竹細工の材料を集めながら、あちこちの山里を転々と回らないと暮らしていけないんだ。

ああ、一年中さ。

だから家なんかあっても仕方ないだろう?

村外れの山の中にユサバリを立てて、大体そこに一週間ぐらい居たかね。

商売が終わると、また山の獣道を何里も歩いて別の村へ移るんだ。

放浪って言うのかい?

そんな暮らしだから、小学校へ通うことなんかできなかった。

勉強したいと思ったこともあるよ。でも母ちゃん達はね、町や村に住む人とは元々が違っていたんだよ。

母ちゃん達は日本人じゃなかった。

日本にいながら、日本という国とは別に生きてきたんだ。

ああ、ずっと大昔からさ。

母ちゃん達には別の総理大臣がおられたんだ。

麻美にはわからないだろうね。

日本人じゃないから、母ちゃん達は戸籍もないし、税金も払わないし、兵隊へも行かずに済んだ。

だから義務教育とやらも受けなかった。

母ちゃん達の先祖は、大昔からずっと山の民として、日本の国に縛られないで暮らしてきたんだよ。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(八)

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四.黄昏時の掠奪者 (八)

麻美には初めて話すね。

母ちゃんが生まれたのは、滅多に人も通らん山の中だった。

山里の村かって?

いいや、山里よりもっともっと山深いところよ。

電気も来ない。

郵便も届かない。

そもそも住む家などないから、山の河原や洞穴で寝泊まりしていたんだよ。

ユサバリっていうテントがあってね、その中で家族が暮らしていた。

夏の暑い時も冬の寒い時も、そう、毎日がキャンプみたいなもんだったよ。

ユサバリには炉が切ってあってね、鍋をテンジンに吊るしてご飯を煮炊きするのさ。

ああ、ガスなんかないからね、火をおこす枯れ枝を山へ集めに行ったもんだよ。

トイレ?

あはは、そんなもんないさ。

子供も大人も森の中でやりっ放しだった。

そこらに落ちている木の葉でお尻を拭いてさ。

でも風呂は露天風呂だよ。

たいていは川の水浴びで済ませるけど、寒くなると焼いた石を水溜りに投げこんで、温泉みたいにして入ったねえ。

テレビやラジオはなかったけど、夏は裸になって川で遊んだ。

魚やウナギ、スッポンもたくさん獲った。

秋になると、山へキノコを採りに行ったりしてね。

何だい、ポカンとした顔をして。

住む家がないなんて麻美には信じられないだろうね。

でも母ちゃんが子供の頃はね、周りにそんな家族がたくさんあったんだよ。

母ちゃん達と山で暮らしていたのは、三家族で十五人ぐらいだったかな。

みんな仲良しで楽しかったよ。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(七)

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四.黄昏時の掠奪者 (七)

母は昭和十六年生まれである。

戦争の混乱があったとしても、母が小学校に入学する年には、今と変わらぬ義務教育が施行されていた。

大病でもしない限り、誰もが学校へ通わなければならない時代に幼年期を送っていたはずである。

麻美は鉛筆を止めて母の背中を見た。

「ねえ、母ちゃん」

「ん、何だい?」

「・・母ちゃんはどうして小学校へ行かなかったの?」

恐る恐るだが、麻美は母の生い立ちを聞き出そうとした。

振り向いた母が、おやっと意外そうな顔をした。

「変な娘だねえ・・」

「だ、だって、母ちゃんは小学校へ行かなかったから、夜の仕事をしなくちゃいけないんでしょう?」

「・・・・」

母の顔が険しく曇った。

すぐに麻美は、子供心に母を傷つけてしまったことがわかった。

「あ、あたし・・ごめんなさい・・母ちゃんが好きだよ。母ちゃんの子供で良かったと思っているよ・・怒らないで母ちゃん・・」

慌てて麻美は、脂粉の香がする大きな背中に抱きついた。

「馬鹿な娘だねえ・・母ちゃんは学校へ行かなかったことを、恥ずかしいと思ったことなんかないよ」

母はにっこり笑って麻美の頭を撫でた。

そして今も忘れることができない不思議な物語を、幼い麻美に語って聞かせてくれたのだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(六)

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四.黄昏時の掠奪者 (六)

麻美は初めて不憫という感情を持ったのは母に対してであった。

今日遊びに行った友達の家で、彼女の母親がクッキーを焼いてくれた。

父親は大きな商社に勤めていて、山手の丘に建つ立派な洋館の庭には、青々とした芝生が敷き詰められていた。

ドラマで観るような憧れの家庭。

もし麻美にも父がいたら、母は四十過ぎてまで、厚化粧して夜の街へ通わずともよかったに違いない。

否、貧しくてもいい。

家族三人で暮らせたら、決して友達を羨ましくひがむこともなかったろう。

だが物心ついた時から父はいなかった。

「なんで麻美には父ちゃんがいないの?」

幼かった頃はおそらく母を困らせたことだろう。

だが麻美の成長とともに、いつしか父の存在は母娘の間でタブーになっていった。

母は街のキャバレーで働きながら、麻美を女手一つで育ててくれている。

「お前の母ちゃんは飲み屋の女だろう」

同級生にはよく母のことで虐められた。

正装の服を持たぬ母は、父兄参観でも派手な夜の衣装と化粧で学校へ来た。

だが麻美は歯を食い縛って堪えた。

母の苦労はよくわかっていた。

母は日本語の読み書きができなかった。

見よう見真似で名前ぐらいはかけたが、新聞はもちろん、麻美の教科書すら読めないようだった。

麻美が小学校へ入学した頃、母は頻りにランドセルを撫でて呟いていた。

「あたしも小学校で勉強したかったよ」

おそらく母は、何かの事情で義務教育を受けられなかったに違いない。

読み書きすらままならない母は、体を張って生活費を稼ぐしかなかったのだろう。

つづく…

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『人外境の花嫁』四.黄昏時の掠奪者(五)

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四.黄昏時の掠奪者 (五)

夕焼けが母の記憶を呼び覚ます。

昭和六十年頃、麻美が小学校四年、母はおそらく四十代半ばだったろう。

横浜は本牧の裏長屋。

六畳一間の薄汚れた木造アパートで、麻美は母と二人で暮らしていた。

夕陽しか射し込まない暗い部屋。

時代から取り残された、野良猫の小便臭い路地裏が母娘の棲み家だった。

麻美が小学校から帰ると、母はいつも三面鏡に向かって化粧をしていた。

「宿題はあるのかい?」

「うん」

「なら宿題が終わってから、飯を温めて食うんだよ。母ちゃん、今夜は遅くなるかもしれないから先に寝な」

母は三面鏡の鏡に写る麻美を見ながら、パタパタとファンデーションを叩いた。

夜の女。

口には出せなかったが、麻美も幼心に薄々と母の仕事を理解していた。

(母ちゃん・・)

シミーズ姿の母は、だぶついた上腕の脂肪と染みだらけの肩を揺らして、夜目には男を騙せる厚化粧を懸命に施している。

母から目を逸らした麻美は、小さな卓袱台にノートを広げて勉強を始めた。

つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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