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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(十二)

『人外境の花嫁』 

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三.青楼街の偏執狂 (十二)

だが降矢木は、ふんと鼻を鳴らすと、埃を被った一冊の書物を取り上げた。

「それは旧約聖書的な迷信だよ。ダーウィンの進化論を信じていながら、アダムとイヴが原初の夫婦であったとは大笑いだな」

「・・はあ?」

「進化論を信じるなら、原始人間はサルだったとことになる。果たしてサルは、厳密に一夫一婦制を営んでいるかな?」

畠山と月絵は、いつものことではあるが、顔を見合わせて降矢木の前に沈黙した。

「そもそもだね、原始人間は乱交状態にあったか否かは、十九世紀後半における文化人類学の大きなテーマだったのだよ」

降矢木はそう言うと、『母権論』と題字された本を捲った。

バッハオーフェンは『母権論』の中で、娼婦制と規定した原始乱交の時代から、集団婚など緩やかな結婚が生まれた母権制の時代、そして夫婦の排他的で独占的な性関係が確立した父権制の時代へと発展してきたと説く。

「このバッハオーフェンの着眼が、後にマルクスやエンゲルスが共産主義理論へと発展させたのだよ」

畠山と月絵は目を丸くした。

「えっ、乱交から共産主義が生まれたんですか・・」

「そうだよ。何故なら乱交とは、男も女も誰の所有物でもない状態じゃないか」

降矢木は顔色一つ変えず、さも当たり前のように言い放った。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(十一)

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三.青楼街の偏執狂 (十一)

降矢木は続けた。

「実はハプニングバーの系統は、昨今始まったものではなく、五十年前の同伴喫茶から続いているのです」

「同伴喫茶?」

秋月は懐手に唸ったが、その名を初めて聞く月絵は、喫茶店はむしろ一人で行く方が珍しいのにと首を捻った。

同伴喫茶とは、元々ジャズ喫茶や名曲喫茶の同伴席が進化したものである。

暗い店内で背の高いソファが飛行機の座席のように同方向に並ぶだけで、そこにはプライバシーを守る壁もなく、カップルは周囲にいる男女の性愛が垣間見られる仕組みになっていた。

秋月が降矢木を遮った。

「確かに同伴喫茶とハプバーは、どちらもカップル同志で行くところだが・・」

「同伴喫茶、カップル喫茶、そしてハプバーへと続く流れは、複数の男女が性空間の共有を求めるものなのです」

あっと秋月が声を上げた。

「そういうことか・・確かに同伴喫茶へ行くと、他の淫らなカップルが刺激になったものだよ。その窃視癖と露出癖がエスカレートして、今のカップル喫茶やハプバーになったと言うことか」

「秋月さん、人間は乱交に言い知れぬ欲望を持っているのです。それは太古の昔から、人間のDNAに刻み込まれた欲望なのです」

やっと乱交の意味がわかった月絵は、顔を赤らめながら憤然と降矢木を睨んだ。

「先生、それは間違っています。乱交なんて一部のふしだらな人間がする変態行為です」

「せ、先生、私も同感です。乱交が人間の持つ性欲の根源だなんて・・アダムとイヴの昔から、男と女は一対一で愛し合う生き物じゃありませんか」

納得がいかないのか、畠山は月絵の援護射撃をした。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(十)

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三.青楼街の偏執狂 (十)

月絵は首を傾げた。

まだ男性経験こそないが、女友達の間では「耳年増の月絵」で通っていた。

それは幼い頃から、風俗店の並ぶ裏路地が遊び場だったからである。

むろん店の中で男と女が何をしているかまではわからなかったが、派手な看板に書かれた風俗用語や、裏路地を歩く女達のふしだらさは今も鮮明に覚えている。だが早熟な月絵も、さすがに乱交の看板を掲げる風俗店は記憶になかった。

女性雑誌のおかげで、性行為の意味は高校時代に勉強したものの、乱交について月絵は何の知識も持ち合わせていなかった。

「畠山さん、乱交ってどういうこと?」

「あ、いや・・ちょっとわからないなあ」

円らな黒い瞳で尋ねられた畠山の方が、却ってドギマギして口ごもった。

降矢木は二人を無視して続けた。

「風俗は男と女の一対一が基本となってきました。だが最近、あるジャンルの風俗がクローズアップされています」

「降矢木君、それはハプバーのことを言っているのかね?」

秋月は疑心暗鬼な表情で降矢木の顔色を窺った。

ハプバーへ行ったことがあるかと月絵が聞くと、また畠山は頬が千切れんばかりに首を横に振った。

「つ、つ、月絵ちゃん、僕はハプバーのハの字もわからないよ」

「あら、私だってハプバーぐらい知っていますよ。野毛二丁目にあるお店でしょう?」

おやっと意外そうな顔で降矢木が月絵を見た。

「ほう、月絵君はハプバーへ行ったことがあるのかね?」

「ううん、うちの若い者が話していたの。でも何のお店かしら・・バーだから飲み屋さんだろうけど、ハプって・・沖縄のハブを漬けた泡盛を飲ませるのかしら?」

降矢木と秋月は、お互いに顔を見合わせて笑いを噛み殺した。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(九)

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三.青楼街の偏執狂 (九)

降矢木は呆れた表情で畠山を見た。

「原稿はメールで送ると何度も言っているじゃないか」

「いや、でも・・お会いして原稿を頂くのが編集者の務めと心得ておりまして・・」

畠山の目が泳ぐのを降矢木は見逃さなかった。

「ふん、それは嘘だな。君は月絵君を口説くのが目当てなんだろう?」

「め、めっ、滅相もない」

ちらちらと秋月の顔を横目で見ながら、畠山は頬が千切れんばかりに首を横に振った。

くだらんと独り呟いた降矢木は、顔面蒼白の畠山を無視して、ガラス戸を開けたまま再び秋月と話し始めた。

月絵は聴き耳をたてた。

どうやら秋月は、新しい形態の風俗店を模索しているらしい。

「しかし降矢木君、私も長いこと風俗に係わってきたが、新しい風俗のジャンルが本当にあるものかね?」

「もちろんです。これだけ世の中に性の情報が氾濫すると、ただ女性を抱くだけでは客も満足しません。アダルトビデオにしても、あれだけのジャンルが存在しているじゃないですか。だから肉欲の満足にプラスアルファして、異質な世界観をつけ足してやる必要があります」

「まあそうだが、SMやコスプレ、それに熟女を扱った風俗・・どれも出尽くした感じがするけどね」

秋月は降矢木の真意がわからず首をひねった。

「ふふ、残っていますよ。男の性欲を刺激して止まない新しい風俗ジャンルが・・」

「ほう、それは?」

「乱交です」

降矢木はそう断言すると、がさがさと周囲に積まれた本を探し始めた。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(八)

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三.青楼街の偏執狂 (八)

だが降矢木はただの道楽息子ではない。

降矢木ファーマシーは、降矢木の祖父が戦後間もない時期に創業した薬局である。

米軍から横流しされた衛生用品を、ここ横浜の赤線街で売り始めたことに端を発していた。

店を受け継いだ降矢木の父は、早くに正妻を亡くすと、取り憑かれたように女遊びに狂ったらしい。

そして早々に降矢木に店を託すと、三十歳も年が離れた若い女を後添いにして、今はハワイのコンドミニアムで暮らしている。

二十八歳で小さな一軒の薬局を任された降矢木は、実はこの四年間で、横浜に十二の支店を展開するドラッグ・チェーンに育てあげていた。

れっきとした若手経営者である。

と言っても降矢木自身はこの本店にこもって読書三昧、官能小説を書いているだけで、支店は十二人の店長に任せっ放しだった。

現にこの小さな本店も、仕入れから接客まで、経営のほとんどを月絵が仕切っていた。

せいぜい降矢木は、月絵が大学へ行っている昼間の店番しかできなかった。

そもそも降矢木の辞書に金儲けという文字はないのだろう。

あるとすれば、人を見抜く力なのかもしれないと月絵は思う。

各支店の店長は皆、この街のソープで働いていた女達だった。

身寄りもなく、年齢や病気で体を売れなくなった女がいると、降矢木は放って置けずに店を任せた。

金儲けのために支店を出すのではなく、女を助けるために支店を増やしているようなものだった。

元来接客に長けた女達である。

金の恐さもよく知っている。

しかも後がない女達は、降矢木に感謝して懸命に働くことを厭わなかった。

次々と歓楽街に出す支店で、女店長達は同業だった水商売の女の心をつかんでいった。

過酷な仕事でぼろぼろの体を気遣い、疲れた心を癒す人生相談にも乗ってやった。

こうして降矢木ファーマシーは、社長が官能小説を書いていても、自然と増収増益を続ける優良企業へと成長したのだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(七)

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三.青楼街の偏執狂 (七)

月絵はため息をついた。

(本当に不思議な人・・降矢木先生って)

敢えて不思議という言葉を使ったが、世間一般では変人という部類に属する男に違いない。

横浜の山手にある中高一貫教育の進学校から、降矢木は家業を継ぐため、東京の薬科大学で管理薬剤師の資格を取った。

だが降矢木の興味が薬剤の効能効果などにあるはずもなく、卒業後、現在月絵が通う私立大学の文学部を再び受験し直したのだった。

降矢木はよく月絵に嘯いた。

「人間なんて、犬並みの欲を持つコンピューターみたいなものだ」

人文科学は人間を研究する学問だが、それは決して単一の理論で説明できるものではない。

心理学・社会学・文学・経済学・医学・法学・商学――どれも人間を異なるアングルから究明する学問である。

つまり人間の全体像を解明するには、いわゆる学際的な、様々な学問分野から研究しなければならない。

人間を究明するため、降矢木はあらゆる学問の書物を読み漁ったらしい。

大学の図書館司書よりも詳しく、降矢木は蔵書のほとんどを諳んじることができた。

むろんその博覧強記ぶりは常人の比ではなく、各学部の教授連中を、道場破りさながら片っ端から論破するほどだったと言う。

だが修士課程を修了後、降矢木は申し訳ない程度に臨床心理士の資格を取り、ここ横浜の福富町に腰を落ち着けた。

そして家業の降矢木ファーマシーの社長に就任すると、一転して湯水の如く金を使って派手な女遊びに興じた。

降矢木は言う。

性欲が人間行動の原点であるならば、自らの身を以って実証しなければならない。

つまり降矢木にとって官能小説は、学者の論文と同様、人間研究の成果を発表する場に他ならないのだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(六)

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三.青楼街の偏執狂 (六)

畠山の顔から血の気が引いた。

胆力を頼りに血生臭い裏社会を生き抜いてきた男に、のほほんとしたサラリーマンが太刀打ちできるはずもない。

「せ、先生・・お助け・・」

正座した畠山は、降矢木に向かって蠅のように手を合わせた。

大袈裟な男だと呆れつつ、降矢木はうんざりした表情で尋ねた。

「畠山君、そもそも何故君はわざわざ東京から横浜まで出向いて来るんだね?」

「それは・・先生にお願いしている来月号の原稿を頂きに・・」

畠山は、官能小説誌『特選文芸』を発刊する立浪出版の編集者である。

薬局の経営者でありながら、降矢木は自作の官能小説を同誌に寄稿していた。

薬局経営者兼官能小説家。

すでに『特選文芸』とは二年ほどのつきあいになる。

決して売れっ子の官能小説家ではないが、マニアックな作風でコアなファンをつかんでいるらしい。

性格と同じで作品も気難しいのである。

『夫がいる樺子は、龍介にその熟れた肉体を預けた』

先月掲載された作品など、官能シーンはこの一行だけで、後は大正時代に生きた華族の娘、柳原白蓮の波乱万丈な人生を、性の観点から論文風に描いたものだった。

降矢木はよく語る。

性は人間行動の原点であると。

それが降矢木の研究テーマであり、官能小説を書き続けている理由らしい。

だが今となっては、社長業と官能小説家、どちらが降矢木の本業なのかもわからなくなっていた。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(五)

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三.青楼街の偏執狂 (五)

実に気難しそうな男である。

ボサボサの髪を気忙しく掻き上げながら、度の強い黒縁眼鏡の鼻あてを指で持ち上げ、畠山と月絵をギロリと睨んだ。

「ここは幼稚園のお遊戯室ではない」

男はヒクヒクと下瞼を痙攣させながら、口を尖らせて不愉快そうな表情で言った。

身の丈は一八〇センチと高いが、風に吹き飛ばされそうな痩身である。

顔は不健康に青白く、だらしない無精髭が全共闘時代の亡霊を思わせた。

降矢木士朗。

この陰にこもった三十二歳の男が、降矢木ファーマシーの社長だった。

月絵が素直に謝った。

「ごめんなさい。先生にお客様が来られているのを忘れていました」

ガラス戸が開いた店長室には、雨後の筍のように書籍が床から積み重ねられている。

その僅かな隙間に置かれた応接セットに、商談には相応しくない派手なアロハシャツの男が座っていた。

「構わないよ、月絵ちゃん。ちょっと降矢木先生に商売の相談をしていただけだから」

初老のアロハシャツを着た好々爺は、孫娘を見るように相好を崩した。

秋月俊二。

横浜近辺で十数軒の風俗店を営む経営者である。

ソープランドを筆頭に、イメクラから性感エステまで、秋月は飽きることなく新しい刺激を男達に提供してきた。

ここ横浜では知らぬ者がいない風俗界の帝王だった。

「だがな・・月絵ちゃんをヌードモデルにスカウトする不心得者は、吉水の親父に代わって俺がマリアナ海峡に沈めてやるからな」

長年夜の街を仕切って来た秋月は、畠山に向かって微笑を浮かべながら凄んで見せた。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(四)

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三.青楼街の偏執狂(四)

月絵は子供の頃から大人びた顔立ちをしていた。遠足の集合写真を見ても、一人だけ背が高く、つき添いの女教師のように見えた。

よくハーフに間違えられもした。

シャープな柳眉にくっきりと大きな瞳、そして高い鼻梁に締まった薄めの口唇が、端正な顔立ちに凛々しさを与えている。

「宝塚の男役みたい」

女子高時代には、学校のロッカーを開けると、バレンタインチョコが毎年溢れ落ちるほど詰め込まれていた。

男顔の大女――モデル並みの美貌を備えながら、月絵は容姿にコンプレックスを抱いて育った。

可愛らしいメイクを心がけているものの、意識しすぎて厚塗りになり、ニューハーフチックな顔になってしまうのだ。

畠山は神主さながらはたきを御幣に見立てると、祟り神を鎮めるように慌てて月絵をお払いした。

「月絵ちゃん、そんなに怒らないで」

「もう知りません。エロ編集者にセクハラされたって、パパに言いつけてやるんだから」

畠山はパパと言う言葉に震え上がった。

「つ、月絵ちゃん、この通りだ。お願いだからお父上だけには・・」

「ダメ、エロ美人だなんて、純真な乙女の心を踏みにじる男は許せない」

「ひえ~、許して月絵ちゃん。俺はまだ東京湾の底には沈みたくないよぉ」

月絵と逃げ惑う畠山の追い駆けっこで、客のいない静かな店は俄かに騒々しくなった。

するとレジ横のガラス戸が、荒々しくも軋みながら開いた。

「五月蝿いな、君達」

そこには、地味な上下ネズミ色のジャージを着た男が立っていた。

つづく…

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『人外境の花嫁』三.青楼街の偏執狂(三)

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三.青楼街の偏執狂(三)

吉水月絵。

降矢木ファーマシーに勤務するアルバイト店員である。

今年二十歳になる月絵は、東京の某有名私立大学に通いながら、地元横浜にあるこの薬局で働いていた。

汗を拭き拭き畠山健一は真面目な表情で言った。

「お世辞じゃないよ。月絵ちゃんだったら、うちの雑誌のグラビアを飾れるもの」

「えっ、畠山さんが勤める出版社って、エッチな雑誌しか出してないじゃないですか?」

「うん、月絵ちゃんが脱いでくれるなら、巻頭見開きで、現役女子大生初ヌードって見出しにするけどなあ」

「いっ、嫌です。絶対嫌ですっ!」

白衣に身を包んだ月絵は、背中まである栗色の艶やかな髪を左右に振った。

女子高時代、何度かファッション誌のモデルに誘われたこともある月絵は、日本人離れした身長一七〇センチのグラマラスな肢体を誇っていた。

ウエストからヒップにかけてのスリムなボディラインに、おそらくDカップはあろう巨乳が胸元を押し上げている。

「水着でもいいんだけどなあ・・月絵ちゃんなら立派なグラビアアイドルになれるよ」

「馬鹿なこと言わないで下さい。こんな大女がアイドルになれるはずないでしょう? 顔だって可愛くないし・・」

「そんなことないよ。確かに月絵ちゃんはアイドル系じゃないけど、そのエロ美人っぽい顔立ちがそそるんだよねえ」

「エ、エロ美人・・もうっ、失礼ね!」

月絵はきっと畠山を睨みつけるや、掃除していたはたきを投げつけた。

つづく…

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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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