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二十三夜待ち 第二十章

二十三夜待ち 第二十章 

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蝉の声がけたたましい。


小鶴の息子は、月讀神社の眼前に広がるゴルフ場に目を遣り、退屈そうに軽くクラブを素振りする動作をして見せた。


「なかなかいいゴルフ場だね」


「ここは一面、薄の野原だったんじゃ」


小鶴は吐き捨てるように言うと、暫し真昼に遠き昔の夢を見た。


二十三夜の青白い月明かりの下、執拗に睦み合う千代と清一の姿は、まるで雌雄の龍が絡み合う神聖な営みに見えた。
月光を遮る木々の葉影が、月に照らされた二人の肌に模様を描き、縄文人が施した刺青のように妖しく隈取っていた。

遠く月讀神社から、呪文にも似た女達の念仏が聞こえてくる。


「南無、二十三夜様」


「南無、二十三夜様」


「南無、二十三夜俗諦勢至菩薩」


「南無、二十三夜俗諦勢至菩薩」


陰暦二十三日の夜、月待ちをすれば願い事が叶うとされていた。

だが千代と清一の願いは叶わなかった。


否、あの戦争の時代、二人は駆け落ちしてまで一緒になろうとは思わなかったに違いない。
生きるだけで精一杯だったからだ。
せめて二十三夜だけでも、二人で過ごせる時間が与えられることを感謝していたのかもしれない。


(酷い時代だった)


あれほど才色兼備だった千代が、画家として大成したかもしれない清一が、人生を最期まで全うすることなく命を絶った。
時代と境遇を怨みながら、花火のように持てる命を刹那の逢瀬に輝かせたのだ。

それが千代と清一にできる生の成就であり、暗い世相への抵抗だったのかもしれない。
清一が描いた天女の下で千代が縊死したのも、人間が生来持つ愛を貫けない時代や境遇に対する無言の抗議だったのかもしれない。

続く…

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二十三夜待ち 第十九章

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「ああ、ダメよ・・いやっ・・」


寛三の舌先が膣孔を抉りながら、弄ぶように肉芽を下からチロチロと刺激する。
不器用な反復ではあるが、却って女の体はそんな単純さに焦らされ翻弄されてしまう。


「小鶴さん、貴女が全てを捨てて僕の許へ来てくれるのを待っている」


「私なんか・・私なんか・・」


「・・どうしてかは僕もわからない。でも毎日小鶴さんと一緒にいられたら、きっとどんなに辛いことでも堪えていけると思う」


寛三は服を脱ぎ捨てると、硬く怒張したものを小鶴の膣孔へ押し当てた。


「ああっ」


体の芯を赤々と熱した剛棒で貫かれた小鶴は、子宮を突き上げられるような圧迫感を下腹部に感じた。
それは夫との交わりでは受けたことのない波動だった。
寛三の想いに突き上げられながら、小鶴は薄紅色の雲がなびく天上界へと昇華させられていく。


「いいっ、いいの・・もっと、もっと激しく私を突いて」


「小鶴・・ああ、小鶴」


二人は汗まみれの体を擦り合わせながら、忘我の世界へと深く迷い込んで行く。
人智では理解できない快楽が、二人の結合点から全身へと広がっていった。


「あ、小鶴・・もう・・」


「あ、もう・・いきそう・・ああっ、いく、いっちゃう・・」


今まで経験したことのない悦びに全身を撃たれた小鶴は、我を忘れて寛三にしがみついた。
子宮が押し潰されるような激しい寛三の熱情に、小鶴はその肢体を揺さぶられながら嬌声を振り絞った。


「あっ、だめ、いくっ、いくぅぅぅ・・」


間攣させながら、小鶴は意識が薄れていくのを覚えた。

つづく…









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二十三夜待ち 第十八章

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戸籍上の夫はいるが、子供を身籠ったことのない二十五歳の成熟した女である。

行商と農作業で鍛えた薄い褐色の体は、女豹のようなしなやかさを保っていた。

透けた肋骨を守るようにくっきりと迫り出した乳房は、硬く蕾んだ少女の張りと、触れなば融け出す年増の柔餡を兼ね備えている。

そして凛と起った乳首は、まだ十九歳の青年に男の覚悟を強いるように、その尖った銃口を容赦なく向けて脅していた。


「抱いて」


重い足枷を解いた瞬間、暴発した若い男の性は、跳びかからんばかりに小鶴をけば立った畳へ押し倒した。


「好きだ・・好きなんだ・・」


まるで大型犬に圧し掛かられているかのように、寛三は荒い呼吸を繰り返しながら小鶴の体を痛いほど抱き締めた。


「いつかこうなることを・・私も求めていたのかもしれない」


初めて受ける男の熱情に、小鶴も恥ずかしいほど陰部が熱くたぎるのを感じていた。


「小鶴さん」


寛三は乳房に顔を埋めて遮二無二乳首を吸った。

千切れんばかりに乳首を吸う男の直向きさが、またいっそう小鶴の女を燃え上がらせていく。


「あっ、寛三さん・・気持ちいい・・」


寛三の舌先が執拗に乳首を捉えるたび、小鶴は小さく喘いで上半身を震わせる。


寛三は性急に小鶴の両脚を開くと、既に濡れそぼっている陰部に顔を埋めた。


「あっ、そこは・・ダメよ・・頭がおかしくなっちゃう・・」


初めて男に陰部を晒して肉裂を舐め上げられた小鶴は、その経験したことがない強い快楽に身を捩った。

羞恥に両脚を閉じて逃げ出したいが、寛三の逞しい腕で剝き身のように拡げられている。

続く…

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二十三夜待ち 第十七章

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素封家の睦沢家に嫁ぎながら、夫の和馬ではなく、かつての生徒だった画家の下布施清一を愛した千代。

千代は社会が用意してくれた幸福を捨て、清一の心の中に生き続ける道を選んだのだろう。


だが小鶴は、道具としての暮らしに不満を抱えながらも、夫や家族を捨てる勇気が持てずに躊躇っている。

寛三に愛されたい。


一度だけでも抱かれたい。

その想いは真実だが、社会から逸脱してしまう恐怖が小鶴を踏み止まらせていた。


その時、小鶴は千代の声を聞いた。


(小鶴、幸せは自分でつかむものよ)

おそらく子供がいなければ、千代は清一と駆け落ちしていたのかもしれない。

あの激しい情事を目撃した小鶴は、それも至極当たり前のことと今になれば思えた。

たとえ赤貧洗うが如き暮らしに身を落とそうが、男に愛されて生きる幸せは、女にとって無上の西方浄土なのではないだろうか。


愛される幸せ。


愛する幸せ。


男と女の歓びを知らずして、与えられた命を虚しく終えるなら、何のために生まれてきたのかわからないではないか。


小鶴は寛三の手を振り解くと、自分から絣の着物を脱ぎ捨てて全裸になった。


「こ、小鶴さん」


思わぬ小鶴の大胆さに、寛三は後退りしながら血走った目を大きく見開いた。

 

続く…

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二十三夜待ち 第十六章

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二人はみすぼらしい六畳一間の部屋で、卓袱台を挟んでしばらく俯き合っていた。
小綺麗に掃除は行き届いていたが、家財道具は布団一組しかない殺風景な部屋だった。

「な、何か食べる物をつくるわ」

立ち上がって部屋の外にある共同炊事場へ行こうとすると、小鶴は乱暴に背後から抱きすくめられた。

「ず、ずっと好きでした」

「・・・・」

力任せに抱かれながら、小鶴はありきたりな言い訳を何度も頭の中で繰り返した。

私には夫がいるから。

ずっと年上のオバサンだから。

私、男の人に想われるような美しい女じゃないから。

(違う・・そんなの嘘だわ!)

ぶるっと小鶴は身震いした。

体の何処からか突き上げてくる抑え切れない情動に、あざとい詭弁と紙一重の冷徹な理性の鎧が剥げ落ちていく。

容姿と貧しさに対する劣等感。

子供の頃から弱い自分を守るために、ありとあらぬる言い訳を考えてきた。
それが大人達には利発と映ったのだろうが、そうでもしなければ、小鶴自身が己の無価値さに押し潰されてしまいそうだった。

確かに道具として小鶴は優秀なのだろう。
子守りにしても、農家の嫁としても、社会が求める労働力としては重宝されてきた。

だが小鶴は愛されたことがない。
酒浸りの父と愛しみを失った母は、小鶴を避妊しそこねた結果の厄介者として売り払った。

その小鶴を買い取った夫と舅姑は、牛馬よりも安価な道具として手荒く扱き使った。
涙が頬を伝った。

小鶴の負い目や劣等感を知りながら、もっと華やかな結婚ができるかもしれないのに、寛三はみすぼらしい行商に身をやつした女を愛すると告げたのだ。

「・・若奥様」

小鶴は口の中で小さく呟いた。

続く…

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二十三夜待ち 第十五章

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その翌々年、昭和三十一年。

世の中は「もはや戦後ではない」という言葉とともに、三種の神器になぞらえた家電製品の登場で、神武景気と呼ばれた高度経済成長が幕を開けようとしていた。

同時に、当時流行した春日八郎の『別れの一本杉』の歌詞の如く、大都市東京への人口集中が始まろうとしていた。

小鶴の行商も右肩上がりに売れ行きを伸ばし、谷上家の家計をずいぶんと助けるまでになっていた。

言い換えれば、小鶴は行商によって、まだ閉鎖的な農家にあって発言権を築き始めたのだった。

そんなある日、軒先を借りていた蕎麦屋の主人が困った顔で小鶴にぼやいた。

「忙しくて猫の手も借りたい時に、あの野郎が風邪をひくなんてなあ」

「鎌田さんは今日お休みなんですか?」

「ええ、あの野郎、近くのアパートで一人暮らしなんですよ。放っておいたら風邪をこじらせて死ぬかもしれねえなあ・・」

「まあ、大変じゃないですか!」

小鶴は急いで店を畳むと、主人からアパートの場所を聞いて向かった。

そこは店から百メートルも離れていない木造のあばら屋だった。

「鎌田さん、鎌田さん」

鎌田と手書きで書かれた張り紙が剥がれかけた二階隅の扉を叩くと、継ぎ接ぎの丹前を着た寛三が現れた。

扉を開けて小鶴を見た寛三は吃驚して飛び上がった。

「谷上さん・・どうして?」

「だって、店のご主人が・・鎌田さん、風邪をこじらせて死にそうだって・・」

「いえ、昨夜からちょっと風邪気味だったんですけど、朝、店へ行ったら、親方が風邪でも盲腸でもいいからつべこべ言わず今日は休めって・・あっ」

「・・そ、そうだったの」

それは寛三の想いに薄々気づいていた蕎麦屋の主人の粋な計らいだった。

続く…

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二十三夜待ち 第十四章

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そんな時、小鶴は一人の男に出逢った。

軒先を借りた蕎麦屋の若い店員、鎌田寛三である。

中学を卒業して花巻から出て来た十九歳の青年で、東北人らしく寡黙だが働き物で、雨の日の出前も愚痴一つ言わなかった。

「一息入れて下さい」

暑い夏の日には香ばしい麦茶を、寒い冬の日には暖かい蕎麦湯を、店先で茣蓙に座る小鶴へそっと持ってきてくれた。

取り立てて何を話すわけでもないが、小鶴は寛三のさり気ない心遣いが嬉しかった。

不器用で蕎麦屋の店主からはよく叱られていたが、そんな寛三が弟のように愛らしく、小鶴も売れ残った野菜を新聞紙に包んで寛三に渡してあげたりした。

「いつか親方に認められ、暖簾分けして貰って自分の店を持ちたいんです」

それが軒先で行商する小鶴に語った寛三の夢だった。

「あら、ステキだわ・・私も鎌田さんみたいに夢が持てたらいいなあ」

小鶴は寛三が羨ましかった。

若い寛三には無限の可能性があり未来がある。

それに引き換え小鶴は、好きでもない夫と死ぬまで農業を続けて暮らす宿命しかない。

「でも谷上さん、夢を叶えるには実力と責任、そして勇気が必要だと親方が教えてくれました。私にはまだそれがありません」

「・・もっともっと修業を積めば自然と自信がつくはずよ。大丈夫、鎌田さんはきっと暖簾分けしてもらえるわ」

「あ、有難うございます」

朴訥に頭を下げて店に戻る寛三の背中を見ながら、小鶴は宿命に縛りつけられた自分に自虐的な笑みを浮かべた。

続く…

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二十三夜待ち 第十三章

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昭和二十九年。
二十五歳になった小鶴は、天から射し込む光明を見た。


それは行商だった。

収穫した野菜を背負えるだけ背負って都会へ売りに行く。
行商は近郊農家にとって貴重な現金収入であり、女達の仕事だった。

人通りの多い街中で茣蓙を敷き、物乞いにも似た姿で農作物を商うことは、自尊心が高過ぎる男達にはできない仕事なのかもしれない。


朝の五時に起きて始発の房総東線に乗る。
背中に五十キロ、両手で二十キロほどの野菜を担いで都会へ向かう。

午前中に商いを済ませて家に戻り、翌日の農作物を収穫して荷造りを済ませ、夕飯の支度や家事を終えて就寝する厳しい生活だった。


小鶴も夫に命じられて行商へ行かされた。
初めて行商に出た小鶴は、村の女達とかち合わないよう川崎の工場労働者が住む地域へ向かった。

そこは路地裏にあばら家がひしめくスラムだった。
蕎麦屋の軒下を借りて野菜を並べてはみたが、行き交う人々に向かって売り声も出せず、しばらくはただ俯いて座っているばかりだった。


下町の女達は人情に厚い。
恥ずかしそうにもじもじする小鶴に、割烹着姿のおかみさん連中が気遣って声をかけてくれた。


「あんた商売は始めてかい?」


「おや、いい茄子じゃないか。ひと山貰おうかね」


「ちょっと、山田の奥さん、この娘初めての行商で難儀しているのさ。可哀想だから近所の人を呼んできて、荷物を捌いてあげようじゃないの」


その日はあっと言う間に野菜は売れてしまった。翌日からは一人二人と馴染客が増え、世間話に花を咲かすほど自然と街に溶け込んでいった。


小鶴は行商が楽しくなった。
商いする喜びや都会の華やかさは勿論、多くの人々と触れ合う喜びは、狭い田舎では決して得られない経験だった。

そして何より、夫や舅姑から解放される時間を持てることが一番の幸せだった。

 

続く…


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二十三夜待ち 第十二章

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だが現実は小鶴の夢を打ち砕いた。


戦争が終わった翌々年、小鶴は十八歳で九十九里浜に近い一宮町の農家に嫁いだ。


睦沢家が決めた結婚だった。

相手は睦沢家に仕えていた小作の親類で、農地解放で小さいながらも田圃を持つ農家の長男だった。


谷上正一は三十歳。


小鶴とは一回りも年が離れていた。

睦沢和馬は何も言わなかったが、おそらく不器量な小鶴の貰い手は、近隣でなかなか見つからなかったのだろう。


しかも正一は粗暴で野卑だった。


稲作の仕事は真面目にするが、教養どころか農業以外のことは何一つ知らなかった。

酒が好きで、飲むと事あるごとに小鶴に暴力をふるった。


「お前のように不細工で小利口でくそ生意気な女は嫌いじゃ。睦沢家に頼まれなければ、俺は絶対にお前など女房にはしなかった」


夫婦の性もほとんど強かんに近かった。

愛撫も何もなく挿入されるだけで、小鶴は正一の性処理道具以外の何物でもなかった。


また舅や姑も小鶴をいびり倒した。


「睦沢家に石女を押しつけられて谷上家も終わりじゃ」


正一と小鶴の間には、結婚して数年経っても子供ができなかった。

貧しい暮らしの鬱憤を晴らすかのように、家族全員がその鉾先を小鶴に向けたのだった。


小鶴は毎晩泣き明かした。


(これがあたしの人生なの・・)


いくら酷い仕打ちを受けても、実家から厄介払いされた小鶴には、帰る家もなく頼れる肉親もいなかった。


早朝から牛馬の如く田畑でこき使われ、家に戻っても深夜まで家事をこなした。

働けど働けど正一や舅姑に認められることもなく、ただ小鶴は地獄へ続く暗い闇の穴へ落ちて行くのだった。

 

続く…


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二十三夜待ち 第十一章

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千代の葬儀があった夜、小鶴は未来に現れるかもしれない男を夢見て、布団の中で無意識に自分の乳房と陰部へ指を這わせていた。

乳首は痛いほどチクチクと尖り、すでに陰部は深い沼地のように熱くどろどろとした粘液が溢れていた。

「あ、ああ・・いけないよぉ・・」

左手で硬く粟立った乳首を摘まみ、右手で敏感になった花蕾と秘唇を交互に辿ると、その悦びの電
流に感電して小鶴は思わず喘ぎ声をあげた。

小鶴は息を荒げながら、何度も幼い頃に聞いた千代の言葉を頭の中で繰り返した。

「小鶴は賢い娘だからきっと大切にしてくれる殿方が現れるわ」

貧しく器量が悪い娘への慰めだと思っていたのに、表向きの幸福を捨てて、千代は清一との許されぬ愛を貫いて見せたのだった。

命を擲っても惜しくない愛。

そんな絵空事を、千代は命を張って真実であると小鶴に教えてくれたのかもしれない。

「ああっ、若奥様・・小鶴は・・小鶴は・・本当に人生を託せる男と巡り合えるんでしょうか・・ああ・・」

身も心も捧げた男を受け入れる己の痴態を夢想すると、自然と陰部を弄る指の動きが強く荒々しくなる。

そして口を半開きにして喘ぎながら、小鶴は全身をヒクヒク痙攣させて女の悦びに征服された。

つっと涙が頬を伝った。

(・・好いた男に巡り会えた若奥様は、この世で一番幸せだったのよ)

小鶴は陰部をそっとちり紙で拭くと、掛け布団を頭まで被って咽び泣いた。
 

続く…


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プロフィール

紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご 挨 拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。                
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
※ 小説を読まれる方へ・・・   更新記事は新着順に表示されますので、小説を最初からお読みになりたい方は、各カテゴリーから選択していただければ、第一章からお読みいただけます。
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